回答のポイント:打ち手の実行主体や「読書」の定義を明確にする
「誰がこの問題に取り組むのか」という実行主体と「読書」という行為を定義し、実行主体が取り組むべき課題を具体化しましょう。

 以下が解答例です。

読書量の改善に取り組む主体を明確にし、「読書」という行為を定義する

 今回、私は各地域の小学校(の教師)が、自身の小学校の児童の読書量の改善に向けて取り組むことを想定し、具体的な打ち手を検討します。

 また、検討に際して、「読書」という行為を「読み手が活字の読み物を自ら選択し、授業やテストなどの"勉強"とは別の目的で読み進める行為」と定義します。

 すなわち、学校の教科書を読むことは「読書」には該当しないと考えました。

小学生が「読書」をする場面を思い浮かべ、構造的に整理する

就活面接「小学生の読書量を増やす方法を考えてください」どう答える? 現役コンサルによる1つの解答例課題を構造的に整理する

 小学生が読書をする場面は、児童が自ら本を選んで読書する「能動的読書」と、長期休暇の課題図書など、親や教師の勧めによって本人の意思にかかわらず読書する「受動的読書」の2つに分けられます。

「能動的読書」は児童が進んで読書をしようとしている状況にあるため、能動的読書を増やすためには、

 ・児童が読書できる時間を増やす
 ・自由な時間の中で、読書に費やす割合を増やす

 ような打ち手を講じることで、読書量を増やすことができます。

 一方、「受動的読書」は親や教師が児童に対して何らかの読書をする機会を与えるような状況にあるため、

 読書量=読書機会×機会あたりの読書量

 と考え、「読書機会」「機会あたりの読書量」を増やす打ち手を考えればよいと整理できます。

実行主体である小学校が取り得る打ち手を検討する

 今回は打ち手の実行主体が小学校(の教師)であることを踏まえ、

教師の目が行き届く「平日」と、
教師の深い関与が難しい「土日や長期休暇」

 について、それぞれ別の打ち手を講じることを提案します。

 平日については、管理が比較的容易で、緊張感も形成しやすいことから「受動的読書」を増やす打ち手が有効と考えます。

 ひと月1冊の本を読むなどの具体的な目標を据えて、読書の機会を制度的に増やす打ち手が効果的と考えられます。

 土日や長期休暇については、読書そのものの楽しさを生徒に伝えるためにも、「能動的読書」の増加に取り組むべきと考えます。

 具体的には、教師が小学生時代好きだった本を感想と共に書き出し、長期休暇の自由読書に向けて紹介するなど、生徒が興味をもつ本の魅力発信を教師主導で進行することが効果的と考えられます。

※ケース面接の答えは1つに定まるものではありません。提案内容が皆さんの考えと大きく異なる場合もあると思いますが、その際は思考の深さや提案内容の具体性を見比べて自己評価してみてください。

面接官からの質問

就活面接「小学生の読書量を増やす方法を考えてください」どう答える? 現役コンサルによる1つの解答例Photo: Adobe Stock

――小学校以外に「小学生の読書を増やす」ことを課題に感じている主体にはどのようなものがありますか?

 小学校以外でこの課題に取り組む主体には、マクロな観点として「文部科学省」などの行政が日本全体に施策を展開するパターン、ミクロな観点として家庭単位で児童個人に読書を促すパターンがあると想定できます。

――今回の「読書」の定義は、どのような意図を持って定めましたか?

 読書を自発的な「知の探索」の営みと想定しました。

「小学生の読書量を増やす」最大の目的を想像したときに、教科書や参考書類ではなく、人格形成につながるような個々の興味に基づく活字媒体との接触が重要と考え、「読み手が活字の読み物を自ら選択し、授業やテストなどの“勉強”とは別の目的で読み進める行為」という今回の定義を設定しました。

――「受動的読書」を促す平日の打ち手と、「能動的読書」を促す土日や長期休暇の打ち手では、どちらが優先度が高いと考えますか?

「能動的読書」を促す土日や長期休暇の打ち手の方が優先度は高いと考えます。

「受動的読書」の機会提供は読書する習慣づくりには有効ですが、あくまでやらされている状況に過ぎず、卒業などの環境変化とともに読書習慣もなくなってしまうことが考えられます。

 一方、「能動的読書」が児童に定着した場合は、児童間での波及効果や自発的な読書量増加も期待できるため、より根本的な問題解決につながると思います。

(本稿は『問題解決力を高める 外資系コンサルの入社試験』から一部を抜粋・編集したものです)