「社内の人に嫌われている営業は結果を出せません」
そう語るのはアメリカン・エキスプレスの元トップ営業である福島靖さん。世界的ホテルチェーンのリッツ・カールトンを経て、31歳でアメックスの法人営業になるも、当初は成績最下位に。そこで、身につけた営業スキルをすべて捨て、リッツ・カールトンで磨いた目の前の人の記憶に残る技術を実践したことで、わずか1年で紹介数・顧客満足度全国1位になりました。
その福島さんの初の著書が『記憶に残る人になる』です。ガツガツせずに信頼を得る方法が満載で、「人と向き合うすべての仕事に役立つ!」「とても共感した!」「営業が苦手な人に読んでもらいたい!」と話題。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、営業に必要な「感謝」の話を紹介します。(構成/石井一穂)
記憶に残った「営業部のKさん」
僕が働いていたリッツ・カールトンのラウンジは、ときには自社の社員がお客様との打ち合わせで利用することもありました。
そういった社内の利用者で、今でも記憶に残っている人がいます。
20代後半のKさん。営業部の爽やかな男性です。
お客様と訪れたKさんを予約されていた席へご案内すると、いつも「よろしくお願いします!」と爽やかに挨拶してくれました。
そして打ち合わせが終わると、Kさんは入り口のスタッフへ「ありがとうございます」と伝え、お客様をエレベーター前までお見送りします。
ほとんどの人はこのまま自身の部署へと帰っていきますが、Kさんは違いました。
お客様を見送った後、ずっとラウンジの入り口に立っていて、僕と目が合うとササっと近づいてきてこう言うんです。
「今日は素敵なサービスをありがとうございました。おかげさまで、良い打ち合わせになりました!」
僕以外の人に対しても同様に、毎回、担当ウエイターに感謝の言葉を直接伝えて帰っていきました。
「感謝」するから、助けてもらえる
あるとき、思わず質問してしまいました。
「Kさんは、なぜいつもお礼を言ってくれるんですか?」
すると、こんな答えが。
「僕がウエイターだったら、直接お礼を言われたら嬉しいかなと思って」
Kさんが成績優秀な理由が、僕はわかった気がしました。
均一なサービスを届けるのが仕事ですが、僕たちもやっぱり人です。
感謝を伝えてくれる人や敬意を払ってくれる人には、全力を尽くしたくなります。
たとえ予約が混んでいても、Kさんから頼まれると「なんとか席をつくってあげよう」と、みんな意欲的になっていました。
予約と予約の間が1時間あれば、「40分までなら」と。
その後のテーブルセットを急いでおこなわなくてはいけなくなったとしても、Kさんのためなら席をつくりたくなるんです。
社内で嫌われている営業は活躍できない
社内のスタッフに嫌われている営業は活躍できません。
営業は一人でお客様のもとに向かう仕事とはいえ、営業活動に集中できるのは社内の仲間やスタッフのサポートがあってこそだからです。
偉そうにふるまうと、孤軍奮闘することになります。
優秀な人は、社内の仲間にも支えられています。
それをしっかり自覚していて、感謝を伝えています。
だからさらに支えてもらえて、結果につながる。
そんな好循環をつくっているんです。
(本稿は、『記憶に残る人になるートップ営業がやっている本物の信頼を得る12のルール』から一部抜粋した内容です。)
「福島靖事務所」代表。経営・営業コンサルティング、事業開発、講演、セミナー等を請け負う。高校時代は友人が一人もおらず、18歳で逃げ出すように上京。居酒屋店員やバーテンダーなどフリーター生活を経て、24歳でザ・リッツ・カールトン東京に入社。31歳でアメリカン・エキスプレス・インターナショナル・インコーポレイテッドに入社し、法人営業を担当。当初は営業成績最下位だったが、お客様の「記憶に残る」ことを目指したことで1年で紹介数、顧客満足度、ともに全国1位に。その後、全営業の上位5%にあたるシニア・セールス・プロフェッショナルになる。38歳で株式会社OpenSkyに入社。40歳で独立し、個人事務所を設立。『記憶に残る人になる』が初の著書となる。