製薬会社のコールセンターに、処方薬を飲んだがまったく効果がないとクレームをつけ「ぼったくり」であることをその従業員に認めさせようと延々と文句をいい続けた人。万人に平等に効果がある医薬品はなく、ましてやコールセンターの従業員をいくら詰めても、「ぼったくりです」などと応えるはずはない。
だが、「薬は絶対に効果があるべき」という強いゆがみが、怒りに変わってしまう。
人間だからできること、できないことがあるのは当たり前のことなのだが、カスハラをする人は「サービスを提供する側の人権」に対する意識が欠如している傾向が強いのだそうだ。
カスハラは負の連鎖を生む可能性
また、悲しいことに、カスハラを受けた人が消費者側に立ったとき、たまった怒りやうっぷんを晴らそうと、同じような過度の要求をしてしまう例もあるという。カスハラは負の連鎖を生む可能性があるのだ。
いくらカスハラを続けたところで、最終的に要求は通らない。当人にとっても、何一つ良いことがないのがカスハラだ。人間は怒りを感じても、6秒経つと理性が働くと考えられており、
「接客やサービスに腹が立ったら、まずは6秒間を何とかやり過ごしてほしい」
と戸田さんは話す。
「企業などがカスハラの具体例を明示し始めたのは良いことだと思います。顧客に何をしたらダメなのかを知ってもらうだけではなく、職場で働く人にも、自分が消費者やサービスを受ける側に回ったときの対応を学んでもらうことができると思います。時間はかかると思いますが、『これはやってはダメ』の意識が徐々に浸透し、社会が良くなることを期待しています」(戸田さん)
カスハラモンスターが生きづらい社会を、作ることができるだろうか。
(國府田英之)
※AERA dot.より転載