下水が通らず仮設トイレ、
解体撤去の予定は立たず…

 珠洲市役所の周りを見ていくと、何一つ進んでいない解体撤去。地震によって倒れた住居が全てそのままで放置してある。マンホールが盛り上がっているところが多数あってクルマが立ち往生してしまいそうだ。営業していた郵便局の駐車場には仮設トイレがあることを考えると、下水が通っていないのだろう。郵便局の窓口でこの辺りの解体撤去はいつ始まるのですかと聞くと「分からないですね」という返事だった。

 現地の人に話を聞くと「さすがにひどい。県庁が何も仕事をしていない。何のために行政がいるのかさっぱりだ。馳知事はパフォーマンスばかりだ」という人や、「みんな頑張っている。仕方がない」と諦める人がいた。

 この状況をかつて官邸で危機管理をしていた人物に解説してもらった。

「今回、石川県庁の動きが、発災直後から後手後手に回っているという話をよく耳にするが、むしろ官邸は何をしているのかと感じる。危機対応への行政の動きの鈍さは、田舎へ行けば行くほど顕著になる。牛とか馬にえさをあげるのか、田植えはよく知っているのだが、防災、復旧、復興のときに何を優先していいのかが全然分かっていない。

 震災対応のポイントは、声を上げられない一番弱い立場の人をどう救うかという一点です。現在であれば、珠洲の住民などが一番弱い立場にいるのですから、声を上げられていないという前提で行政は動く必要があります。具体的に今やるべきは、ルールとしては自治体からの要請が必要なものの、何を要請するべきかも分からない状態なのですから、中央から石川県に半ば強制的にどんどん人を送り込むことです」

 震災対応は県庁の責任においてすることになっているが、過去の震災と比べてここまでひどい状況になっている原因は、岸田官邸の不作為にありそうだ。

 能登被災地である奥能登4市町(輪島市、珠洲市、能登町、穴水町)での人口流出が急速に進んでいる。人口が合計で6万人弱のこれら4市町では、1月から3月にかけての転出超過が月を追うごとに増加し、その総数は1582人に達している。この数は前年同期の3.8倍に相当する。このまま能登は駄目になってしまうのだろうか。あまりにも復興が進んでいない被災地の状況に、もっと声を上げていくべきだろう。

郵便局駐車場の仮設トイレ郵便局駐車場の仮設トイレ。水道の復旧がまだだ
鎌倉市から贈られた「仮設トイレ」鎌倉市から贈られた「仮設トイレ」だが、1月9日に鎌倉を出発して以来、半年経っても下水が通じず、今の今まで活躍するとは誰も思ってなかっただろう