海外から襲来する「ドローン・テロ」に目と耳を塞ぐ軍事専門家、彼らの「言い分」が不安すぎる日本では一般ユーザー、専門家問わずドローンやAIへの理解の低さを感じざるを得ない(写真はイメージです) Photo:PIXTA

 3月下旬に中国の動画サイト「BiliBili」で、海上自衛隊の護衛艦いずもをドローンで撮影した映像が投稿され、およそ1カ月後の5月9日には本物の可能性が高いという報道が流れた。

 動画が投稿された際、SNS上ではホンモノ説よりも生成AIによるフェイク説、CG説を述べる投稿が多く見られ、民放のニュース番組では軍事ジャーナリストや大学教授が生成AIによるフェイク説を力説した。当の防衛省も1カ月後に本物の可能性が高いと判断するなど、分析能力の低さが露呈した。防衛省、軍事ジャーナリスト、大学教授まで揃いも揃って、ドローンやAIに対する理解が低いことが明確になった。

 さらに防衛省が本物の可能性が高いと発表した後には、対抗策として現在開発中の高出力マイクロ波の導入を主張するような記事も見られた。しかし、現に起きた事案に対しては、将来の兵器ではなく、現在ある兵器で対策する必要があるはずである。

議論が交錯する中で
フェイク説を唱えた専門家の言い分

 フェイク説を唱えた専門家には、軍事を専門とするジャーナリストやAIに精通しているはずの大学教授にも見られた。

 4月2日にフジテレビ系列のニュースに出演した(リンクはFNNプライムオンラインの記事)軍事ジャーナリストの高橋浩祐氏は「いずもの艦番号は183なんですが、船の甲板にはその下の2桁の83が必ず記されている。(映像の船には)8はあるが3は書かれていない」「私はフェイク。まがいものの可能性が高いと見ています」とコメントしている(FNNプライムオンライン「日本の空母をドローン撮影した 護衛艦『いずも』の“ドローン映像”が中国SNSに 専門家は“フェイク”の可能性を指摘」)。

 同番組でAIに詳しい専門家として出演した東京工業大学の笹原和俊教授に至っては、「原理的には現在の生成AIの技術を使えば、土台となる写真だったり動画を持っている方であれば、原理的にはこういうものは作れてしまいますね。AIの技術は進歩したのだなということを印象づける動画ですね」とコメントしている。