エヌビディアCEOが30年前からGPUにこだわる理由、「先見の明」の裏にある意外な趣味とは?エヌビディアの株価は上がり、時価総額で一時、世界首位となった。(写真はイメージです) Photo:PIXTA

エヌビディアをGPUに特化した
熱狂的な“ゲーマー”フアンCEO

 AI分野のかなりの部分で、エヌビディアが成長を支えている。大手企業が取り組むAIのトレーニングにエヌビディアのチップは欠かせない存在だ。中国は、米国の規制でエヌビディアの最新チップを確保できない。そのため、スペックを落としたAI半導体でさえ需要は旺盛だ。

 現時点で、エヌビディアに代わるAIチップ企業は見当たらない。強さの秘密の一つは、フアンCEOの事業戦略だろう。元々、フアンCEOは熱狂的な“ゲーマー”だったといわれている。1993年にエヌビディアを創業し、GPUの開発を始めた。

 過去、同社は倒産の危機や新製品の販売不振に直面したこともある。一般的に、経営者は何か失敗すると、成功企業の戦略を模倣することが多い。しかし、フアンCEOは違った。一貫してGPUにこだわった。かなり早い段階からAI分野の成長にGPUの重要性が高まると確信していたようだ。

 なぜGPUが重要か。それは、CPU(中央演算装置)と比較するとわかりやすい。CPUはパソコンなどに搭載され、複数のタスクを正確にこなす。主な機能は演算と制御に分類できる。演算面でCPUは四則計算を行い、関連するデータを一時保存する。一連の計算などを円滑に行うために一つ一つの手順を、チップがコントロール(制御)する。機能が多いため、作業に時間がかかる。

 一方、GPUは画像データの処理に特化している。AIの効率的なトレーニングに、演算能力の高さはモノをいう。エヌビディアは、徹底してそこにこだわった。自動車、製薬など業種に関係なくユーザーが高い満足を得るために、CUDAブランドのソフトウエアも提供している。

 エヌビディアは学界からも評価されている。2012年、コンピューターによる画像認識精度を競う大会で、トロント大学の研究者が開発したAIが圧勝した。優勝者は、エヌビディアのGPUとソフトウエアでAIをトレーニングしていた。

 エヌビディアは、GPUの製造を世界最大のファウンドリーで台湾企業のTSMCに委託している。フアン氏がGPUの設計開発に特化し、演算能力を高めたことが、AI分野の急成長を支えている。