AI分野で独り勝ちなのが、GPU(画像処理半導体)の企画・開発・設計を行う米エヌビディアだ。同社は、データセンター向け高性能AIチップの約9割のシェアを独占しているとみられる。エヌビディアの競争力の源泉は何か。独走は、いつまでも続くのか。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)
AIが世界に与える影響は
“21世紀型の産業革命”
AI分野の成長は目を見張るものがある。現在、そのAI分野で独り勝ちなのが、GPU(画像処理半導体)の企画・開発・設計を行う米エヌビディアだ。同社は、データセンター向け高性能AIチップの約9割のシェアを独占しているとみられる。現在、米インテルや韓国のサムスン電子など大手半導体メーカーは、GPUの開発を急いでいるものの、まだシェアの差は縮まっていない。
エヌビディアの競争力の源泉は、GPUを開発に特化し、実際のメモリーや製造ラインの構築は他の企業に任せていることだ。こうして、同社は、AIやデータセンターに必要な高性能のGPUを世界に供給し、すさまじい勢いで成長している。これは、創業者であるジェンスン・フアンCEOがこだわった事業戦略によるところが大きい。
AIが世界に与える影響は、“21世紀型の産業革命”と呼ぶべきだろう。そう遠くない将来、人間の意図を理解し、独自の判断を下す自律的なAIが登場する可能性もある。AIがホワイトカラーの仕事を代替することもできるはずだ。それは、社会の仕組み=システムを大きく変えることになるかもしれない。
わが国はスマートフォンの登場に対応できず、いわゆる“ガラケー”が淘汰(とうた)され電機産業が競争力を失った経緯を持つ。ただ、それを悲観していても仕方がない。これからは、過去の経験則が当てはまらない、世界経済の構造変化が起きることも考えられる。そうなると、どこかに日本経済復活のチャンスもある。AIは、そうした可能性を開く重要なカギになることは間違いない。