「世界の患者を救う」「内視鏡AIでがんの見逃しをゼロにする」。このミッションに合う人に仲間になってもらうことを、採用方針の軸に据えたのです。今いるほぼすべてのスタッフは、このミッションの共有者といっていいと思います。

 稲盛和夫さんの有名な言葉に「人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力」がありますが、能力があっても熱意がなければ難しい。方向性が間違っていると、うまくいかない。考え方、熱意、能力、その3点すべてが必要になるのです。

 私たちの面接でも、まず能力があるのかを見て、能力があっても、熱意がない人はだめ。

 さらにはやりたいことが一致しているかどうかを見ます。

 そのためには、前職でどんな仕事をしていたのかについてのエピソードを聞くのが一番いいと思います。具体的にどんなプロジェクトに絡み、どういう仕事を受け持っていたのか。実はメンバーに入っていただけで、重要な意思決定には全然絡んでいなかったなんていうケースもあります。

「具体的にどういうところがつらかったですか?」

「どういうところで工夫して成果を出しましたか?」という感じでエピソードを深掘りして聞いていくのが、その人となりが一番よくわかります。

大人数の会社には
日々の行動指針が必要

 さいたま市のクリニックを経営していた頃は、サポートに来てくださる医師とは昼食を毎日一緒にとっていましたし、看護師・医療事務スタッフもアルバイト含めて15名程度でした。いわばツーカーの間柄であり、“世界最高水準の胃腸科肛門科診療を提供する”という考え方がしっかり共有されている実感がありました。

 しかし、社員数が50名を超えてくると、「世界の患者を救う」という大きなミッションは共有できても、日々の行動や考え方まで共有するのは困難になってきます。

 クリニックなら医師も看護師も医療事務も皆“医療関係者”であり、それまで受けてきた教育やバックグラウンドがある程度同じです。しかし、AIメディカルサービスにおいては、管理(経理・人事・法務・情報システム)、研究開発・製品開発(エンジニアがメインですが、エンジニアにもAIエンジニアだけでなくデータサイエンティスト・QAエンジニア・インフラエンジニアなどさまざまな職種があります)、医療規制(品質保証・薬事・臨床開発)、事業推進(マーケティング・販売)、経営企画(全社戦略・プロダクト・政府対応・広報など)、海外(米国・東南アジアなどの海外事業)など、実にさまざまなバックグラウンドを持つ人たちが働いています。