一例を挙げると、私は当初、「リモートワーク」や「フレックスタイム」という言葉自体が理解できませんでした。医師はどれだけ帰宅が遅くなっても、翌朝9時には職場にいるのが当然でしたし、勤務時間をその日によって変えるという概念もそれまでの常識にまったく反するものでした。

 このようにお互いが受けてきた教育・バックグラウンドが違う人たちが集まり、大きな目的に向かって協働するうえでは、大きなミッションだけでは十分ではありません。日々の行動にも共通のバリュー(大きな目標をどのように目指すのかという具体的な行動指針)を設定する必要が出てきたのです。

1年かけて設定した
3つの行動指針

 社員数が50名を超えた2022年頃から、経験豊富な人事責任者のもとで、AIメディカルサービスとしてのバリューの策定に取りかかりました。社員を交えてディスカッションを何回も行い、当社のミッションを達成するために何が必要なのか、そしてお互いが何を大事に考えているのかの意見交換を繰り返し行いました。

 半年近くの議論ののちに、大きく3つの行動指針を決めました。1つ目は顧客をはじめとする相手との向き合い方について。もう1つは組織力について。これは、単に能力が高いだけのメンバーが集まったグループでは個々の能力の総和にしかならないところを、チームとしてお互いの能力の相乗効果を生み出して、一人では達成できない目標を達成しようという内容です。最後の3つ目は、個人の仕事への向き合い方についてです。

1.「聴く力を、解く力へ。」私たちは、どんな現場でも、相手の思いに耳を傾け、課題の本質を見極めることで、真の解決となる答えを導き出していきます。

2.「個人の力を、組織の力へ。」私たちは、ともに働くメンバーとの間で、お互いの個性や立場を尊重した議論と行動によって、チームとしての総合力を高めていきます。