内視鏡のイラストPhoto:PIXTA

医療スタートアップである「AIメディカルサービス」を起業した筆者。しかし、社員の人数が増える中で、目的の達成には行動指針が必要だと痛感したという。東大出身開業医が考案した3つの行動指針、そしてマネジメント術とは?本稿は、多田智裕『東大病院をやめて埼玉で開業医になった僕が世界をめざしてAIスタートアップを立ち上げた話』(東洋経済新報社)の一部を抜粋・編集したものです。

人に任せるうえで
カギになること

 どんな仕事でも、最初は誰でもミスします。作業効率も悪いでしょう。自分でやったほうが早いし、ミスされて、自分がカバーして、しかも給料が払われている……割に合わないと思うこともあるでしょう。ただそれは、部下を成長させ、会社を大きくするために、誰しも越えなければいけない壁です。

 少し話がそれますが、クリニックを開業して1つわかったことがありました。

 普通、お金は使えばなくなっていきます。ところが、開業医の世界は、お金を使えば使うほど、お金が増えていくのです。

 最新の設備を2000万円かけて買えば、その設備を使って診療ができ、売り上げが伸びます。もちろん使い道にもよりますが、適正にお金を使うと、それがもっと大きくなって返ってくるのです。

 これは設備にかぎった話ではありません。人件費も同様です。がんばってくれる人には、もちろん気持ちでも報いますが、きちんとお金でも報いるべきです。

 もともと私のクリニックは、看護師の給与が埼玉県内の平均に比べて高めになっていましたが、ときには思い切ったボーナスを出したりしていました。そうすると、士気も上がり、もっとがんばってもらえるようになります。がんばりに対して目に見える形でも報いること。これも、人に何かを任せるうえでカギになると思います。

4人でスタートした会社は
いまや100人規模の組織に

 4人でスタートしたAIメディカルサービスは、今では100人を超える規模にまで大きくなっています。

 今後の人員計画は特に持っていません。人が増えれば、問題が解ける事業ではないからです。

 実は当初は、スタートアップに来たい人、とにかくできそうな人をかき集めた時期もありました。しかし、ワークしませんでした。そのため厳選採用に転換し、同時に、AIメディカルサービスとしてのミッションも明確にしました。