もしも、部下から「小さくないミスの告白」をされてしまったら、リーダーとしてどう反応すべきか。ミスをつい責めてしまうと、本人だけでなく、周囲まで暗い空気に染まってしまう。そんな時に本当はどうしたらいいか。それを教えてくれる本が、3万人に「人と話すとき」の対話術を指導してきた人気ファシリテーション塾塾長の中島崇学氏の著書『一流ファシリテーターの 空気を変えるすごいひと言――打ち合わせ、会議、面談、勉強会、雑談でも使える43のフレーズ』だ。今回は、同書から特別に抜粋。大きなミスに対するポジティブな対処法を紹介する。
大きなミスを告白されたら
たとえば新製品の発表会を任されたプロジェクトチームで、各メンバーが自分の担当業務について次々と報告していくとします。
すると、ある担当者が青ざめた顔でこう言います。
「記者発表の会場、予約するのを忘れていました……」
放っておけば、ミスをした担当者が袋叩きにあうかもしれません。進行役のあなたは、どのように介入すればいいのでしょうか?
致命的なミスですから、おそらくそこにいる全員が「さすがにこれはまずいだろ。なんでまた!?」と思っています。
あなたがその思いを代弁したら、「さあ、みんなで責任を追及しましょう」という合図になってしまいます。
前向きな空気に変えるステップ
×「大変なことになりましたね……」
×「それはまずいですね」
責めるのではなく、「どうするつもりですか」とミスした人に寄り添うつもりでこう言ったとしても、深刻さが増すだけです。
簡単な解決策も浮かばないこんなとき、私がおすすめするのは、まったく違う角度でステップを踏み、前向きな空気にしていくことです。
現状の受容
「たしかに大ピンチですね」
いきなり前向きになれる人はいません。最初のステップとして不可欠なことは「現状の受容」です。逃げてはダメです。どんなことも向き合わなければ真の明るさにはつながりません。
共感
「落ち込む気持ちもわかります」
次のステップで行うことは共感です。共感の言葉でミスをした人も、まわりの人たちも心が軽くなります。さあ、前向きになる準備ができました。
前向きな話への転換
「むしろ好都合なんじゃないですか。なぜなら、一緒に新しい会場を探すチャンスだから」
視点を転換させる
準備ができたら視点を転換させます。暗い空気になるのは、「失敗」という1つの視点に埋没しているからです。明るく新しい視点を示してあげるだけで、人は自分から前向きに考え出すのです。
○「ちょうどいいじゃないですか! なぜなら……」
わざとらしくても、軽薄なくらい明るい調子で言うのがコツで、「ほかに抜けがないか、点検するきっかけになった」と切り替えます。
●「おめでとう!」
●「面白くなってきた!」
●「ピンチはチャンス!」
とにかく、何があっても前向きに反応するぞと腹を決めて、理由がなくても面白がってしまう。その場合、「なぜなら……」に続く言葉が出てくるか、不安になるかもしれません。
でも、安心してください。前向きな言葉を口にすると、意外とアイデアが浮かぶものです。そのうえ、雰囲気が明るくなるので、アイデア自体はたいしたことなくても、みんなが受け入れて前向きに進んでくれるでしょう。
1on1でも効果的に使える
これは一対一のときでも効き目がある言葉です。失敗した相手は、反省や後悔ばかりを口にするでしょう。
上司と部下の関係であれば、「怒られる」と思って萎縮するかもしれませんが、大切なのは早く手を打つことです。ミスしたときはリカバリーが大切であり、後悔や萎縮したままの状態でいる暇はありません。一刻も早く立ち直って行動するために、前向きな言葉で元気づけたいものです。
「いやあ、面白くなってきた。ここからが本番だね」
実はこの事例、私の若かりし日の失敗談に基づいています。記者発表の会場予約を忘れた私を、上司は個室に呼び出してこう言いました。
「おめでとう、すごい経験だよ! なぜなら、我々の成長につながるからだ。もちろん大ピンチだからあらゆる手段を考えよう。でも、ひとつお願いがある。この体験を学び尽くしてほしい」
最初に言われた「おめでとう」の言葉が、私にリカバリーする気力をくれました。
大ピンチのときを含めて、私たちはどんなときにも楽しむことで事態を打開できます。そしてそれがピンチから脱出するコツです。楽しむために「ひと言」から変えていきましょう。