かねてより、日本は保有する個人の金融資産における現金・預金の割合の高さが指摘されています。2024年時点の日本の個人の金融資産は2000兆円超となっていますが、そのうちの半分以上が「現金・預金」という構成になっており、「株式等」の保有割合は11%程度にとどまります。

 一方で、米国では「現金・預金」の保有割合は12.6%、「株式等」の割合が39.4%と日本とほぼ真逆の構成になっていることがわかります(2023年時点)。

図表:家計の金融資産構成(日米欧比較)出所:日本銀行調査統計局「資金循環の日米欧比較」2023年8月25日発表 拡大画像表示

 株式投資が盛んな米国では、個人投資家によるリスクマネーが創業期のスタートアップを支え、VCがレイターステージで大きな投資を行い、ユニコーンなどの巨大企業を創出する傾向があります。エンジェル投資家の存在がスタートアップの創出のハードルを下げ、VCがその後の大きな成長を支えるという形で投資の役割分担ができていると考えられます。

 日本においてもエンジェル投資を増やすことで資金調達が多様化され、資金調達環境の改善とその先の経済成長というプロセスにおいて非常に重要な鍵だと指摘されています。

 そうはいっても米国のようなエコシステムを作るのは難しいと思われるかもしれません。ところが、日本の個人の金融資産2,000兆円超のうち1%でもスタートアップに回すことができれば20兆円となり、米国のスタートアップ投資額にも大きく近づくことができます。日本の個人の金融資産には大きなポテンシャルがあるのです。

 オランダ東インド会社のように航海に向けた出資者・エンジェル投資家を広く増やしていくことが、挑戦を生む風土につながるのではないでしょうか。

エンジェル投資の3つの壁

 さてこのエンジェル投資ですが、これまでは一般の個人が参加するにはいくつかのハードルがありました。私たちはこれを「エンジェル投資の3つの壁」と呼んでいます。

1.資金の壁
 エンジェル投資家の平均出資額は508万円程度(参考:独立行政法人経済産業研究所「日本の起業家と起業支援投資家およびその潜在性に関する実態調査」)とされています。最近はエンジェル投資家と起業家とのマッチングサイトもありますが、それでも数百万円からが一般的となっています。スタートアップ側としては数十万円程度の出資を個々に受け付けるのは手間が大きく、かといって個人投資家側としては一度に数百万円を出資するのはかなりハードルが高いといえるでしょう。