1.資金の壁を解決
 株式投資型クラウドファンディングは、その名のとおり「クラウドファンディング」の仕組みを活用しています。インターネットを通じて多くの投資家から少額ずつ出資金を募ることで、投資家としては約10万円からスタートアップに投資できるようになりました。また起業家としては無数の株主と1対1のやり取りを行う必要はなく、多くの投資家から資金を調達することができるようになりました。

2.情報の壁を解決
 スタートアップの投資判断に必要となる企業価値や事業計画、リスクなどの情報を、株式投資型クラウドファンディングのプラットフォームが募集ページで開示します。投資家は、プラットフォームの募集ページにアクセスすることで、その開示された情報を参考に投資先を選ぶことができるようになりました。

3.コミュニティの壁を解決
 プラットフォームは金融庁から第一種少額電子募集取扱業者の登録を受けています。そのスタートアップのリスク事項や成長性をプラットフォームが厳正に審査し、クラウドファンディングの実施の可否が決まっていきます。これにより個人投資家も各プラットフォームの審査を受けたスタートアップにアクセスすることができるようになりました。

 一般の個人にとって、株式投資型クラウドファンディングが、エンジェル投資のハードルを低減(=民主化)する仕組みであることがおわかりいただけたと思います。より多くの方に、株式投資型クラウドファンディングを利用してエンジェル投資を体験していただきたいと願っています。

 ところで先ほど、株式投資型クラウドファンディングのスタートは「日本では2015年」と説明しました。実は、海外にも同様の仕組みが存在します。

書影『日本一やさしい スタートアップ投資の教科書』(ビジネス教育出版社)『日本一やさしい スタートアップ投資の教科書』(ビジネス教育出版社)
波多江直彦 著

 むしろどちらかといえば海外が先行しており、株式投資型クラウドファンディングによる資金調達を行ったスタートアップが後にIPOやM&Aに至り、個人投資家が大きなリターンを得る事例が続いています。特に市場が活況な英国では、株式投資型クラウドファンディングが、ベンチャーキャピタル(VC)やエンジェル投資家と並んでメジャーな資金調達手段となっています。

 こうした中、日本でも株式投資型クラウドファンディングの活用が進んでおり、近年の法改正などでも、スタートアップも個人投資家もより利用しやすい制度へと整いつつあります。将来大きく成長する可能性のあるスタートアップに投資するエンジェル投資、そしてエンジェル投資を広く利用しやすくした株式投資型クラウドファンディングに、今後も注目が集まることが期待されます。