2.情報の壁
 上場企業はIR資料など公開されている情報が多く、企業の成長余地を読み取ったりアナリストなど専門家の解説を読んだりと、自身が投資するかどうかの意思決定がしやすい状態にあります。ところが非上場企業であるスタートアップには財務諸表を公開する法的義務はなく、これら資料を一般公開することはほぼありません。公式サイトなどで事業内容が理解できても、経営状態や財務状況、成長戦略が深く理解できないことには、投資を判断することは難しいといえるでしょう。

3.コミュニティの壁
 有望なスタートアップを見つけ、起業家とコミュニケーションをとり、出資するというエンジェル投資の一連の行動を起こすには、個人で起業家にアクセスできるだけのネットワークが必要です。ところがスタートアップの周辺ではしばしば「スタートアップ村」とまで形容されるほどのコミュニティができあがっており、普通に会社勤めをしている個人が、有望な起業家と知り合うような人脈を持ち合わせていることは稀です。本田圭佑氏ですら、米国のスタートアップの投資機会を探るにあたり、創業間もないアーリーステージのスタートアップはエンジェル投資家を中心にインナーサークルが作られていてアクセスが難しいと考えたことから、ウィル・スミス氏とのドリーマーズファンドを設立したといわれています。エンジェル投資にあたってはコミュニティが重要な意味を持っていますが、新たにそうしたコミュニティに参画することは、一般の投資家にとってハードルが高いものです。

 これら3つの壁が、一般個人がエンジェル投資することへの参加のハードルとなっていました。しかし、これらを解決する新しい手段によって現在ではエンジェル投資に挑戦する一般の個人投資家が増えています。

 その新しい手段こそが、株式投資型クラウドファンディングなのです。

エンジェル投資を「民主化」する株式投資型クラウドファンディング

 株式投資型クラウドファンディングは、日本では2015年の金融商品取引法の改正により制度化された、インターネットを介してエンジェル投資を幅広く受け付ける仕組みです。詳細な仕組みは次の章で説明するとして、まずは株式投資型クラウドファンディングが、先述したエンジェル投資の3つの壁を次のような形で解決することを説明しておきましょう。