熱中症特別警戒アラートの運用が開始、対策とともに「暑さに順応する」ことも大事Photo:PIXTA

 4月から環境省による「熱中症特別警戒アラート」の運用が始まった。

 熱中症の危険性が高まると予想される日の前日17時、および当日朝5時の1日2回、メール配信サービスやLINEを通じ警戒アラートが発せられる。

 同時に従来の「警戒」より一つランクが上の「特別警戒」というアラートが新設された。過去に例がないほどの危険な暑さが予想され、重大な健康被害が出そうな日に発信されるものだ。

 特別警戒アラート発令中は、自治体に図書館などへ「クーリングシェルター」、つまり極端な暑さから逃れるための「暑熱避難所」を設け、一般に開放する義務が課せられる。やむなく外出する際は、立ち寄り先周辺のクーリングシェルターを確認しておくといい。

 熱中症予防の対策は、まず暑熱に身をさらさないこと。外出を避けたり、室内の温度もしっかり下げる必要がある。

 特に、梅雨明けの湿気に酷暑がプラスされる今の時季は、危険度が高い。めまいや大量発汗など熱中症の初期症状を認めた場合は、涼しい場所に移動し、身体を冷やすことが先決。

 外出先なら建物内に避難し、首の付け根、脇の下、太ももの付け根に冷たい飲料入りのペットボトルやぬれタオルをあてよう。自宅なら水風呂や常温シャワーで全身を急速冷却してもいい。

 水分補給は、意識がはっきりし誤嚥リスクが減ってからでも間に合う。一口ずつ、ゆっくり飲み込むこと。また、経口補水液やスポーツドリンクを飲み過ぎると、血圧や血糖に影響する可能性がある。基礎疾患がある人は、水をベースに適量の水分を補給していこう。

 酷暑の健康リスクは熱中症にとどまらない。その負荷は、心血管疾患や慢性腎臓病リスクを増加させる。近年は、睡眠不足や食欲不振、倦怠感による季節性の「夏季うつ」も注目されている。

 矛盾するようだが、暑さに順応する努力も大切だ。エアコンの効いた室内にこもった日の次の早朝は、30分ほどウオーキングをして、しっかり汗をかいておこう。体温調節の要は適度な発汗なのだ。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)