エヌ・ピー・シー社長 隣 良郎(撮影:和田佳久) |
東京都荒川区の古い小さなビルに、今世界で最も注目を浴びている分野で圧倒的なシェアを誇る企業の本社がある。太陽電池の製造装置を主力事業とするエヌ・ピー・シーである。
同社は、太陽電池製造過程のうち「モジュール工程」の製造装置で、世界シェア46%を持つ。シャープ、京セラ、三洋電機といった日本の代表的メーカーはもちろん、商業レベルで太陽電池モジュールを生産している世界の企業約150社中、じつに130社以上が顧客だ。
社長の隣良郎は、5つの強みを挙げる。まず、あらゆる種類の太陽電池に対応していること。太陽電池には「結晶系」「薄膜系」などがあり、優位を競い合っている。
エヌ・ピー・シーはどれが主流になろうと、装置を提供できる。第2が“技術領域の網羅性”。モジュール工程の装置にも各種あるが、それらは技術領域がまったく異なる。同社は「自社製品で一貫ラインとして提供できる、唯一の企業」と胸を張る。
太陽電池製造装置への参入は、1994年に遡る。祖業は食品の真空パックなどに使われる真空包装機だが、その技術の延長で、大手メーカーから太陽電池製造装置の1つ「真空ラミネーター」の発注を受けたのがきっかけだ。当時、太陽電池はまだ研究開発段階であり、製造装置も専門の技術者も世に存在しなかった。そこから、「自ら学び、1つひとつ技術を上げていった」のである。
エヌ・ピー・シーは、開発、設計から製造、そして販売、サポートまでをすべて自社で行なっている。これが第三の強みだ。「顧客のニーズを直接、開発に反映させることができる。製品の進化を止めないことが、最も大きな参入障壁となる」。