「お客様は神様です」の本当の意味を理解する

「お客様は神様です」

「お客様は神様!」と主張する高齢クレーマーを一瞬で黙らせるウラ技出典:医学博士・平松類氏の著書『「老害の人」にならないコツ』(アスコム)

 これは演歌歌手の三波春夫さんが残した名言で、その後に漫才トリオのレツゴー三匹さんが広めたとされているフレーズですが、三波さんの真意とかけ離れた使い方をされるシーンが多いように感じます。
 三波さんにとってのお客様=神様は、自分の歌を楽しんでくれる聴衆・オーディエンスのことであり、神前で祈るときと同じように歌に真摯に打ち込むべく、自らを鼓舞するためにこのように表現したとのことなのです。お客様は神様なんだから、店員や取引先に何を言っても構わない――では断じてありません。

 でも、意味合いが誤って解釈されるかたちで世間に広まってしまいました。だから、三波さんやレツゴー三匹さんと同じ時代を生きてきた高齢者が、クレームの正当性を主張するために、このフレーズをよく口にする傾向にあるのだと思います。

 タッチパネルによる注文方式の導入は、ヒューマンエラーの防止やコストカットを目的とする企業努力の一環であり、高齢者を排除しようとしてのものではありません。「お客様は神様なのだから、元のシステムに戻せ」というような主張は、筋違いにもほどがあるでしょう。

 年長者に対する敬意を強要するかのような姿勢は、もしかしたら 「自分は普段からあまり敬われていない」という意識の表れかもしれません。仕事をリタイアしたり、子育てはおろか孫の世話の必要もなくなったりして、自らの社会における存在意義を感じられなくなった――その無力感の裏返しの行為という可能性もあるでしょう。

 世間では一般的に「高齢者を大切にすべき」と認識されているので、自分を守ろうとするために、それを拡大解釈しているとも考えられます。もちろん、程度が甚だしくなれば、そこに「社会の壁」が生まれることになります。