止まらない超円安、潮目を変えられる「たった1人」の人物とは?Photo:PIXTA

円安に歯止めがかからない主な要因
実質金利が大幅にマイナスだから

 円が売られる要因の一つは、わが国の実質金利(名目金利マイナス物価上昇率)が大幅にマイナスであることだ。現在、わが国の政策金利(無担保コールレートの翌日物)は0~0.1%程度である。5月の消費者物価指数は前年同月比で2.8%上昇した。実質金利は、マイナス3%程度ということになる。

 米国、ユーロ圏などは実質金利がプラスだ。米国であれば、政策金利であるFFレートの誘導目標レンジは5.25%~5.50%。5月の個人消費支出の価格指数は、総合、食品とエネルギーを除いたコア指数ともに前年同月比で2.6%上昇だった。米国の翌日物金利の中央値は実質ベースでプラス2.5%程度だ。

 金利水準からいって、米ドルを保有したほうが有利である。物価上昇率に予想インフレ率を用いることもあるが、金融市場が織り込む物価の上昇率を用いて実質ベースの長期金利を求めると、わが国はマイナス0.6%程度、米国はプラス2.0%台にある。

 他の要因として、国際収支の変化もある。海外とわが国のマネーフロー(おカネの流れ)は変化している。わが国の経常収支は黒字を保っており、これは貿易サービス収支の赤字額を、第1次所得収支の黒字で補っている格好だ。国内企業が海外に設立した子会社の配当金や、保有債券からのリスクの受け取りが、第1次所得収支の黒字を支えている。

 ただし、第1次所得収支の多くは国内に戻らず、海外で再投資されている。23年度の速報ベースで、国内企業の対外直接投資からの収益は約21兆円あった。うち50%は海外で再投資された。クラウドコンピューティングやネット広告関連などの“デジタル赤字”も増え、国内から海外に流れ出る資金は増えた。

 さらに、わが国の財政赤字の拡大と、それによる多額の資金供給もある。高齢化による社会保障関係費の増加、コロナ禍の発生や物価対策による財政支出の増加など、わが国の財政赤字は増加傾向にある。財務省の資料によると、17年(暦年)にGDP比で4.1%だった財政赤字は、22年に5.5%に拡大した。G7の中でイタリアに次いで高い。

 22年、国債など公的な債務の残高はGDPの257.2%に上昇した。G7だけでなく、諸外国と比較して突出している。リーマンショック後から現在まで、わが国の公債残高は増加傾向にある。こうした状況は持続可能とは考えづらい。しかも、その財政赤字は日銀により賄われ、その分が資金供給となって市中に供給されている。市中に過剰資金がだぶついているため、どうしても投機筋から調達通貨として利用されやすい。