30年前だったら、こんなこと絶対に言えなかったですもん。この年になったからこそ、サラッと言えるんです。さすが大助くん。いつか必ず漫才のネタにしようと思いました。

 11月中旬、約1カ月ぶりの退院を迎えました。大助くんは病院を出るときからそわそわした様子で、「めっちゃええ車椅子、用意しといたからな」と言っていました。私が家で暮らしやすいように新しい車椅子を用意してくれたんです。「ありがとう!」と感謝を伝え、帰宅後、さっそく車椅子に乗せてもらったんですが……どうもしっくりきません。手がハンドリム(手でこぐときにつかむところ)に届かないし、足もブラブラと浮いたままです。大助くんはそれには気づかず、満面の笑顔のまま私の顔をじっと見ています。

「ええやろう、それ」

「うん。でも、どうやって動かすの?」

「なんでやねん。いつもみたいに動かしたらええねん」

「そやからやってるやんか。でも手も届かへんし、足も浮いて届かへんねん」

「えっ?」

「ただのロッキングチェアやで」

 そこにいた全員、爆笑です。どうやらサイズを間違っていたみたい。後日、交換してもらいました。右足がまったく動かなくなって、いったいこれからどうなるんだろうと落ち込んでいた私も思わず笑ってしまいました。これまでも大助くんのおもしろいところをあれこれ書いてきましたが、そのたびに救われてきたんです。

 人間、病気をすると「みじめに見えてないやろうか」という不安がぬぐえません。「体の大きい大助くんが、背中丸めて嫁の介護をしていたら、みじめに見えるんちゃうか。私のせいで申し訳ない」と、どうしても思ってしまうんです。

 でも、大助くんがいちいちおもしろすぎるから、深刻にならないんですよ。実際にやっていることは大変なことばかりです。介護はしんどいことの連続。

途中で耐えられなくなり
大声で叫んでしまった

 毎日、何百回もうさぎ跳びをしているみたいなものだと思います。でも、大助くんは「うさぎ跳びして」って言われたら、「よし、わかった!」と張りきって、うさぎの着ぐるみをかぶってくるみたいなところがあるんです。だから吹き出してしまう。ほんまにおもしろすぎます。