厳しい経営環境下でのIT活用のあり方を模索する本企画の第2回は、IT投資の最適化を実現する最新技術について、一歩踏み込んで取り上げる。経営者として知っておくべき最新技術はそう多くはない。そうした技術とどう向き合っていくべきかを考えてみたい。
“持たざるコンピューティング”
という新しい利用モデル
“クラウドコンピューティング”という言葉を聞いたことがあるだろうか。ユーザーがコンピュータ(サーバ)を持たずに、ネットワークを介して必要なコンピュータリソースを利用するという新しい利用形態として、IT業界で注目されている。たとえば、インターネット上で書籍を中心にさまざまな物品を販売しているアマゾンでは、従量制の料金体系を提示してクラウドコンピューティングの提供を開始している。
同様に注目されているサービス形態が“SaaS”である。SaaSは、「Software as a Service」の略で、ソフトウェアの機能をネットワークを介して必要なだけ利用できるというものだ。現在では、グループウェアやメールといった情報系だけでなく、ERPなどの基幹系システムについてもSaaSによるサービスの提供が始まっている。セールスフォース・ドットコムはその代表格だ。
IT動向に詳しい経営コンサルティング会社アイ・ティ・アールの内山悟志・代表取締役は、「これらのトレンドは、将来的にはコンピュータを所有するというモデルだけではなくなるという点を示唆しています」と指摘する。SaaSで企業コンピューティングのすべてをカバーするようにはならないだろうが、「SaaSには、初期投資が少なくて済む、ITの運用要員が不要、ニーズの変化に柔軟に対応できる、といったメリットがあり、ノンコアの業務システムから利用が進むでしょう」(内山氏)
こうした“持たざるコンピューティングの利用形態”のベースとなっている技術が仮想化だ。「今までは業務システムごとにサーバを用意したために、どうしても余剰なリソースが発生していましたが、仮想化技術によって1つの高性能のサーバを複数のマシンとして扱ったり、複数のサーバを1つの大きな塊として捉えることができるようになり、コンピュータリソースを柔軟に活用できるようになったのです」と内山氏。