車高を下げると
走りの安定性が増す!

 このセッティングを施す理由は、車高を下げると重心も下がり、コーナリング時の安定性が向上するからです。また、空気力学(空力)的にも有利になります。車高を下げて車体下部に入り込む空気を減らすと、揚力(クルマが浮き上がろうとする力)が低減され、走行の安定性がさらに増すのです。

 これは何もレーシングカーに限った話ではありません。乗用車でも、車高を下げると走行性能は上がります。走りの質が高まるからこそ、車高が低いクルマは「格好良い」と認識されているのでしょう。

 とはいえ、レースの世界には例外もあります。「ダカールラリー」などの荒れた路面や砂漠を走るレースでは、路面とボディの接触を防いだり、砂にタイヤが埋もれる事態を避けたりする目的で車高を上げます。

 このため競技では、サーキットレースでは車高を下げ、クロスカントリーラリーでは車高を上げるといったように、種目によってチューニングの戦略が変わってきます。ただ乗用車が砂漠を走ることはないので、やはり車高を下げた方がメリットを享受できます。

 次に、デザイン面について見ていきましょう。

なぜヤンキーは車高の低いクルマに乗りたがるのか?→専門家の考察が目からウロコだった!車高が低いクルマは格好良く見える!? Photo:PIXTA

 メーカーのカタログ写真に写っているクルマは、実は市販車よりもフェンダー(タイヤを覆っているパーツ)とタイヤのすき間を狭くし、車高を低く見せている場合があります。

 スタジオで写真撮影を行う際には、車内に砂袋を積み、あえて車高を下げてから撮影する例もあるくらいです。モーターショーなどに展示されるコンセプトカーも、一部の例外を除けば、そのほとんどがフェンダーとタイヤのすき間が狭い仕様になっています。

 こうした工夫が施される理由は極めてシンプルで、すき間が狭いとクルマのスタイルが引き締まって見えるからです。

 しかしながら、実際に売られている国産車の多くは、フェンダーとタイヤのすき間が広く設定されています。日本は国土の約半分が雪国なので、滑り止めのタイヤチェーンを装着するスペースを設けているのです(だからスペースを埋める余地があると言えます)。

 一部の国産車にはフェンダーとタイヤのすき間が狭い車種がありますが、そうしたクルマは装着できるチェーンが指定されています。

 一方で、輸入車にはタイヤチェーンの装着を前提としていない車種があり、フェンダーとタイヤのすき間がかなり狭められています。クルマ好きでなくても、輸入車に「何となく格好いい」という印象がある人は多いでしょう。その「何となく」の正体は、実は「すき間の狭さ」だったりします。

 車高を下げると、このように「走行性能を高める」「愛車をスタイリッシュに見せる」といった効果が得られるのです