EUでは違反すれば
最大で売上高の6%の制裁金
それでは、SNS運営者はただ手をこまねいていただけなのか。
メタはなりすましの詐欺広告を検出する技術を開発したと対外的に公表している。同社の規定に違反した広告は削除し、広告業者のアカウントは無効にして新しい広告は配信できないよう対策している。
ラインヤフーは利用者が友達登録者以外からグループトークに追加された場合に「LINEを悪用した詐欺にご注意ください」と警告が表示される仕組みになっている。広告業者の本人確認も強化する姿勢だ。
動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」日本法人は、著名人の動画や画像を無断で使用した広告を禁止。広告審査を3段階で進め、クリックすると表示されるサイトの信頼性を配信後も確認している。
しかし、世界的に見ると日本の法的な整備は後手に回っているとの印象はぬぐえない。欧州連合(EU)議会は2022年7月、巨大IT企業に偽情報などオンライン上の違法なコンテンツの排除を義務付けた「デジタルサービス法(DSA)」を可決。繰り返し違反し、対策がみられない場合は世界売上高の最大6%の制裁金が科される厳しい内容だ。
日本政府もようやく重い腰を上げたという感じだが、総務省の有識者会議がまとめた素案は(1)ネット広告に対する事前審査の厳格化や基準公表、削除の仕組みを整備、(2)審査体制や掲載停止の申請窓口、確実な本人確認をSNS運営者に義務付け、(3)偽情報に対して行政機関の申請に基づく削除の迅速化と透明性の確保――などを明記している。
これほど巨額の被害を出している詐欺の手口を封じるには、厳格な法規制が必要なのは言うまでもない。国会への法案提出は来年以降になるとみられるが、審議、可決はもう待ったなしだ。