いくら熱心に指導しても、部下が本音を言わずに表面的な会話で済ませてくる――。こんな時、「信頼されていないな」と感じる上司は多いでしょう。実は、このような上司は「ある重要な視点」が欠けている可能性があります。いったい、どういうことなのでしょうか?(アークス&コーチング代表 櫻田 毅)
顧客から理不尽な対応を受けた部下を
元気づけようとしただけなのに……
ある企業の営業課長Aさんは、部下のBさんから新規顧客の獲得に失敗したとの報告を受けました。先方からは、細部にわたる条件面での質問が続いていたため、「いける!」との感触だったのですが。
しかし、Bさんの話を聞いて唖然(あぜん)としました。どうも先方は、最初から契約先を他社に決めていた可能性が高いとのこと。おそらく、本命との交渉材料としてBさんに細かい情報を要求していたのではないかと。つまり、完全な当て馬にされていたのです。
誠実に対応してきたBさんは、こんな理不尽なことがあっていいのかと、完全に落ち込んでいます。そこで課長のAさんはBさんを元気づけようと、こう声をかけました。
「Bさんが頑張っているのは見ていたよ。でも、仕事だからいろいろなことがあるよ。誠実に対応していれば、いつかは必ず報われる。気を取り直して前向きに頑張ろう」
ところが、この言葉でBさんはますます落ち込んでしまいました。さらに、Aさんから心が離れていったのです。実は、Aさんには、部下とのコミュニケーションにおいて、ある「重要な視点」が欠けていたのです。