政治活動をするのに、多くの事務所を構える必要なんかない。秘書も大量に雇わなくていい。それらは選挙対策にすぎない。

 政治とカネの問題は、じつは身近なところに転がっている。実際、私の子供時代にも、周囲でカネがらみの話は飛び交っていた。

 生まれ育った明石の漁師町では、大人たちが集まって、「議員に10万円渡した」などと話していた。そのカネで市営住宅に入れてもらったとか、就職を世話してもらったとか。「これじゃ少ないと言われて、もう1回持っていった」とも聞いた。

 子供心に、「なんで貧乏な漁師が、たくさんカネをもらってる政治家にカネを持っていかなあかんねん。政治家ちゅうのは困ってる人を助ける仕事ちゃうんか」と思ったのが、私が政治家を志した原点のひとつです。

封筒の中には200万円の束
おむすびの具は1万円札

 後に市長になったときも、何度となく“口利き”を頼まれた。「孫が明石市役所を受験するからよろしく」と、封筒にカネを入れて受験番号を書いて渡そうとするんですわ。「絶対、そんなもん受け取らん」と言って、きっぱりと断わったが、それでも、私だけやなく実家にもやってきたりしたから、「『息子とは連絡が取れん』と言え」と伝えたわ。そういう文化は、いまだに残っている。

 昔、ある大物政治家から、「おむすびの中に、梅干しの代わりにラップに包んだ1万円札を入れて配ったりもした」という話を聞いたことがある。かつては、有権者に直接現金を渡すような選挙が珍しくなかった。今も、飲み食いさせるくらいは裏でやっていたりする。

 私が2003年に国会議員に当選した直後、面識のない地元の有力者が事務所にやってきて、いきなり封筒を差し出してきたことがある。中を見たら200万円入っていた。

 腹が立って「舐めとんのか!」と、怒鳴って突き返した。要するに、金を受け取らせて言いなりにさせるつもりやったんやろうな。当選したての野党のペーペー議員にもカネを持ってくるんやから、与党の議員なんか、もっともらっとるやろね。