個人投資家の間で大きな支持を集めベストセラーとなった『株トレ 世界一楽しい「一問一答」株の教科書』の続編『株トレ ファンダメンタルズ編』の発売が始まった。前作ではチャート分析を扱ったが、今作は業績や財務の読み方がテーマだ。60題のクイズを通じて「株で勝つ技術」を学べる1冊だ。著者は、ファンドマネジャー歴25年、2000億円超を運用してTOPIXを大幅に上回る好実績をあげたスペシャリストの窪田真之氏。本稿では本書から特別に一部を抜粋して紹介する。
景気は循環する
好景気が長く続くと、景気が永遠に良いと勘違いする人が増えますが、そんなことはありません。いつか必ず景気後退期が来ます。
反対に、景気が悪くなると「いよいよバブル崩壊」といって、いつまでも不況が続くとカン違いする人が増えますが、いつか必ず景気は回復します。
株式投資をする時は、それをしっかり頭に入れておく必要があります。
株価は景気循環を半年~1年先取りする傾向があります。
景気、金利、株価は密接に連携して動きます。米国株では以下の関係があります。
日本株にも当てはまりますが、米国株ほどきれいには当てはまりません。
今景気が良いか悪いかだけでなく、半年から1年後に景気がどうなっているか考える必要があります。
株価の大きな波と小さな波
株には上昇と下落のサイクルがあります。
数十年サイクルで動く「大きな波」と、景気循環にともなって4~5年で動く「小さな波」があります。
日本株は、1980年代に「バブル」と呼ばれる大きな上昇波動を形成。
1990年代には「バブル崩壊」の大きな下落波動を形成しました。
その後、日本株復活の大きな上昇波動に戻っています。
これが、数十年タームで形成する大きな波です。
1973年当時、日経平均株価は5000円前後で、東京証券取引所(第一部)の平均PERは約13倍でした。
東証上場企業の株価は、平均すると1株当たり利益の13倍で評価されていたわけです。
世界の主要国株価指数は、古今東西おおむねPER10-20倍で評価されているので、1973年当時の日本株は割安だったと言えます。
ところが1980年代に入ると、自動車、電機、半導体産業で日本が欧米を凌駕し、「ジャパン・アズ・ナンバー1(日本が世界1)」と言われる中で日本株が急騰。1989年に日経平均は3万8915円をつけました。
利益の増加を伴わず、夢だけで株価が膨らんだため、東証のPERは70倍まで上昇しました。利益では説明できない「バブル」でした。
投資価値を高めた日本株は、再び割安に
2013年以降、構造改革で投資価値を高めた日本株は、再び上昇トレンドに入ります。
日経平均は2024年にバブル高値を超えて、4万円をつける場面がありました。
今回の株価上昇は、財務内容を改善し、収益力を高めながら進んできたので、東証プライム市場の平均PERは16倍前後です(2024年6月時点)。
私は、投資価値を高めた日本株は再び割安になったと判断しています。
景気循環と日経平均株価の関係
株価には、4~5年ごとに繰り返す「景気の波」があります。
「景気が悪くなると株価が下がり、景気が良くなると株価が上がる」というものですが、完全には一致しません。
過去の経験則では、株価は景気よりも半年から1年早く動きます。
上のグラフで、ITバブル崩壊不況(2000年12月~ 2002年1月)、リーマンショック不況(2008年3月~2009年3月)をご覧ください。
景気がピークアウトする半年~1年前に、日経平均がピークアウトしていることがわかります。日経平均が、景気を先取りして動いています。
上のグラフで、「景気停滞」と書いたところをご覧ください。4ヵ所あります。
2004年「景気踊り場」、2014年「4月の消費税引き上げ(5→8%)後の景気停滞」、2015年末「資源安ショックにともなう景気停滞」、2022年「世界的インフレ、金利上昇による景気停滞」です。
いずれも「いよいよ景気後退期に向かう」と不安が広がったものの、景気後退には至らずに盛り返したところです。
4回の景気停滞期でも、日経平均は下落し、停滞期を過ぎてから上昇するサイクルを描いています。
乱高下しつつ上昇する日経平均
日本株は、割安で中長期的に上昇余地が大きいと判断しています。
とは言っても、一本調子での上昇はありません。これからも急落と急騰を繰り返しつつ、上昇していくと思います。
次のチャートを見ると、2013年以降、日経平均は何度も急落を挟みながら上昇しています。
景気後退期に入ると30%くらい下げます。景気後退に入らなくとも、さまざまなショックで10~20%下げることはよくあります。それを頭に入れておく必要があります。
(本稿は、『株トレ ファンダメンタルズ編』から抜粋・編集したものです。)