「優秀な人を選び育てる」ではなく
メンバーの組み合わせで考える

 人の顔色を気にせず、強気で「買ってください!」「今決めてください!」と迫れる人も中にはいます。そういう人はどんどんそうして売ったらいい。ただ大事なのは、1つの勝ちパターンのみを良しとしないことです。

 仕事の仕方はその人の在り方の数だけあります。一元的なやり方を「正攻法」のように扱わず、多様な顧客の多様なニーズを1人の個人に背負わせるより、多様な持ち味の多様な営業パーソンで分担し合いながら負ったらいいのです。つい「売れる営業はコレ」と決めがちですが、そうではない。

 一元的な基準ではこぼれてしまう人に、その人に合った役割、在り方を提案できるのが脱・「能力主義」。つまり個人の能力一辺倒ではなく、凸凹の持ち寄りという「関係性」でなんとか前に進む方向性を提案できるというのが組織開発の強みなわけです。

 中でも最も重要だったのは、「優秀な営業」を「選んで育てよう」というスタンスから、今、目の前で試行錯誤しながら頑張ってくれているメンバーの持ち味を認め、それを活かして職務を組み立てる道もあるのだと、見せてさしあげることでした。

書影『働くということ 「能力主義」を超えて』(集英社新書)『働くということ 「能力主義」を超えて』(集英社新書)
勅使川原真衣 著

 これがマネジャー側の変革ですし、メンバー自身も、守破離(武道や芸道の修業段階を示すことば)は大事とはいえ、生理的に受け付けないようなことには果敢に、代案をもって交渉することの有用性に気づかされた経験となったようです。相手を値踏みしたり、一方的に卑下するようなことが、「働くということ」ではありません。どの立場でも、自己のモードを適切に「選ぶ」ことにより、道は拓けるのです。

 思い出してください、個人はレゴブロックのようなものなのです。小さな1つのブロックに、「あるべき姿」だのなんだのと言って、あれができてこれもできて……と追い求めることは、ナンセンスです。それどころか、1つのブロックを予測可能な範囲で小さくまとめているに過ぎないことも多々あります。

「優秀」な人を「選ぶ」発想から、組み合わせの妙にこそ気づけるよう、自身のモードを「選ぶ」。そうして、人と人、人と顧客、人と職務とを組み合わせていくわけです。