<正解>

 100匹のドラゴンが100日目の夜に同時に島を出る

 ……ん? 
 ちょっと意味がわからない問題です。
 ドラゴンたちは、「自分以外のすべてのドラゴンの目は青色である」と知っています。そこにあなたが「少なくとも1匹、青の目をしたドラゴンがいる」と告げたところで、何か変わるとでもいうのでしょうか。どのドラゴンも「そんなことは知っている」と思うでしょう。つまりあなたの発言には、なんの意味もないように思えます。

 ですが、よく考えてみてください。「すべてのドラゴンは、自分の目の色がわかっていない」というのが大きなポイントです。

 そしてお馴染みの、「ドラゴンはきわめて論理的な生物である」という条件。これまでの問題において「論理的」とは、「論理的に先を見通す力」のことでした。ということで、この問題も「先読み」が必要になりそうです。

 でも、100匹いるんだよな……。

ドラゴンが「1匹」なら?

 基本的に、扱う数や情報が多いときは、まずは「単純化」して考えます。
 この問題でやっかいなのは、どう考えても「100匹」という数です。まずはこの数をグッと単純化して、「1匹」のときから考えてみましょう。

 とはいえ1匹のとき、話は簡単です。
 ドラゴンは即座に「目が青色なのは自分だ」と気づくので、1日目の夜に島を出ます。

ドラゴンが「2匹」なら?

 では、島にいるのが「ドラゴンA」「ドラゴンB」の2匹の場合ならどうでしょう。

 2匹のドラゴンは互いに、相手の目が青色だとわかっています。
 そしていま「少なくとも1匹のドラゴンは青色の目である」と知らされました。1日目、ドラゴンAは以下のように考えます。

 「もし私の目が青色でないならば、ドラゴンBは自分の目が青色だと即座に気づくはず」
 「ということは、ドラゴンBは今日の夜、島を出るだろう」

 そして、ドラゴンBも同じように考えます。

 ところが2日目、ドラゴンAとBは再び出会います。お互いに「相手が島を出るはず」と思っていたため、驚きます。
 そして、ドラゴンAはこう考えます。

 「もし私の目が青色でないならば、ドラゴンBは昨日の夜に島を出ていたはず」
 「でも、ドラゴンBは出なかった」
 「つまり、私の目は青色なのだ」

 そして、ドラゴンBも同じように考えます。
 そのため2日目の夜、ドラゴンAとドラゴンBは同時に島を出ます。

ドラゴンが「3匹」なら?

 では、島にいるのが「ドラゴンA」「ドラゴンB」「ドラゴンC」の3匹の場合ならどうでしょう。
 ここからが、少しややこしくなります。

 3匹のドラゴンは互いに、他2匹の目が青色だとわかっています。
 そしていま「少なくとも1匹のドラゴンは青色の目である」と知らされました。1日目、ドラゴンAは以下のように考えます。

 「もし私の目が青色ではないなら、青目のドラゴンはBとCの2匹」
 「BとCは、はじめは相手だけが青の目をしていると思い込むが、1日目の夜に相手が島を去らなかったのを見て、自分の目が青なのだと気づくだろう」
 「つまり2日目の夜に、BとCは同時に島を去るはずだ」

 そして、ドラゴンBとCも同じように考えます。

 そのため2日目の朝、3匹は再び出会いますが、ここではまだ驚きはありません。
 ところが、全員が「自分以外の2匹が青い目をしている」と思っているため、2日目も誰も島を出ません。
 よって3日目、3匹は再び出会います。

 そして、ドラゴンAはこう考えます。

 「もし私の目が青色でないならば、ドラゴンBとCは、1日目に相手が島を出なかったのを知って、2日目の夜に島を出ていたはず」
 「でも、ドラゴンBもCも島を出なかった」
 「ということは“もし私の目が青色でないならば”という仮定が間違っている」
 「つまり、私の目は青色だ」

 そして、ドラゴンBとCも同じように考えます。
 そのため3日目の夜、ドラゴンA,B,Cの3匹は、同時に島を出ます。

ドラゴンが「100匹」なら?

 ドラゴンが4匹の場合も、それぞれのドラゴンは同じ思考をたどります。
 3日目まではとくに何も起こりません。4日目になってもドラゴンが全員残っていることに気づき、そこではじめて「自分の目も青色だった」と気づきます。

 ここまでの流れから法則を導くと、

「n匹のドラゴンはn日目の夜に島を出る」

 ということです。
 すなわち100匹のドラゴンは、99日目までは誰も自分の目が青色だと確定できません。しかし100日目にすべてのドラゴンが島に残っていることで、自分を含む100匹すべてが青色の目をしていると気づきます。

 その結果、100日目の夜に100匹すべてのドラゴンが島を出ます。

「思考」のまとめ

 意外すぎる結末でした。仮定に仮定を重ねて、100日先まで先読みしていく。まさに幾重にも視点を移動させて考える「多面的思考」が発揮される問題です。
 現実にはここまでの先読みができるとは思えませんが、そこはドラゴンという生物の為せる業だと考えましょう。

 解くためには、複雑さを増大させている100匹という数を単純化して、小さいケースから考えていくのがコツでした。そして、どのケースにも当てはまる「法則」が導き出せたら、それを適用して正解を導く。
 どれだけ複雑で、途方もない状況にも惑わされない、論理的に考える力が身につきますね。

 ・遠い未来まで先読みが必要なときは「小さい例」から考える
 ・「法則」が見抜けると、いかなるケースにおける結果も推測できる

(本稿は、『頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』から一部抜粋した内容です。)

野村裕之(のむら・ひろゆき)
都内上場企業のWebマーケター。論理的思考問題を紹介する国内有数のブログ「明日は未来だ!」運営者
ブログの最高月間PVは70万超。解説のわかりやすさに定評があり、多くの企業、教育機関、テレビ局などから「ブログの内容を使わせてほしい」と連絡を受ける。29歳までフリーター生活をしていたが、同ブログがきっかけとなり広告代理店に入社。論理的思考問題で培った思考力を駆使してWebマーケティングを展開し、1日のWeb広告収入として当時は前例のなかった粗利1500万円を達成するなど活躍。3年間で個人利益1億円を上げた後、フリーランスとなり、企業のデジタル集客、市場分析、ターゲット設定、広告の制作や運用、セミナー主催など、マーケティング全般を支援する。2023年に現在の会社に入社。Webマーケティングに加えて新規事業開発にも携わりながら、成果を出している。本書が初の著書となる。