管理職が担うオペレーション・マネジメントにおいては、稟議書の電子化やチャットによる進捗管理など、ITツールの導入で効率化できる部分があるかもしれません。これらは作業のアウトソーシングの一環であり全体の効率化のためのものですが、ツール導入と同時に、企業としての承認プロセスや権限を見直すことも検討されるべきでしょう。

管理職の役割を分担するには
ベテラン社員と有望な若手が狙い目

「ワークシェアリング・アプローチ」のもう1つの軸は、管理職からメンバー層へのエンパワーメント施策です

 エンパワーメントはデリゲーションと同じく、基本的には権限移譲の意味で使われる言葉です。しかし、この2つをわざわざ使い分けたのは、エンパワーメントには、メンバー層の力や主体性を引き出す「やりがいの付与」や、今までに無い経験をさせる「育成」の意味合いが含まれるからです。

 管理職の役割が多すぎるとき、メンバー層への役割の移譲・シェアは常道です。ここでは、メンバー層の中でも「誰に」シェアするのか、「何を」シェアしていくのかについて整理しましょう。

 エンパワーメントとして役割分担したいメンバー層の筆頭は、「ベテラン社員」です。今の日本企業は、至る所で「年上部下をうまくマネジメントできない」問題が生じています。多くの場合、ポストオフ後のベテラン社員に対してきちんとした役割が明示されず、力を余らせていたり、「給料の分だけ働けばいい」と行動を縮小しすぎる傾向が見られます。

 キャリア相談、メンター役、1on2の相手役、技術伝承など、過去の経験や社内知識を活かした役割を依頼すれば、喜んで引き受けてくれる人も多いでしょう。サントリーホールディングスや傘下の企業で実施された有名な施策、シニア社員による「TOO(隣のおせっかいおじさん・おばさん)」がまさに高齢社員に相談役を付与した好事例です。