次に役割分担をしたいのは「期待できる若手」です。後継者になりうる若手の育成には、適切なエンパワーメントが欠かせません。管理職見習いの「お試し期間」のように位置づけることで、計画的に役割を渡していけます。

技術職でも専門職でも上に行くなら
マネジメント業務から逃げられない

 最後に「スペシャリスト職」や「エキスパート職」などマネジメント業務を行わない専門職も、役割分担の対象になります。私見では、このスペシャリスト制度は日本においてあまりうまくいっていない企業が大半です。そもそもマネジメント、特にピープル・マネジメントが「できない」か「したくない」社員向けに、それでも長期雇用したいという消極的な理由で設置されており、技術認定の水準や実際に従業員が持っているスキルもバラつきがちです。

忙しすぎる「罰ゲーム管理職」が今すぐ仕事を頼むべき相手とは?『罰ゲーム化する管理職 バグだらけの職場の修正法』(インターナショナル新書) 小林祐児 著

 いくらエキスパート職でも上位のグレードになれば、一定のマネジメント役割を担ってもらうことが必要です。組織全体の方針策定などは難しくても、情報収集や検討、採用活動、後任者の育成や指導、キャリア相談などは、こうした人たちにも任せられます。

 技術者・専門家が人嫌いで「スキルへの引きこもり」に満足するようでは、いくら個別専門的スキルが高くても大きな仕事はできません。そうした組織貢献も1つの役割であることを、専門職でもグレード要件に明記すべきです。

 もちろん外部へのアウトソーシングという方法もあります。特にコロナ禍以降、キャリア・カウンセリングやコーチング、外部支援者との1on1が遠隔会議で可能になりました。オペレーショナルな作業なら、副業者やフェローなどにお願いすることもできます。今の管理職の負担を外部にアウトソースすることで、負荷軽減が期待できます。