それは地域の規模感、あるいは「ライバル鉄道会社の多さ」といった根本的な違いがある。

 まず、近畿圏は人口1800万人程度であり、3000万人規模の首都圏に比べれば規模は小さい。かつ、東京への一極集中がはなはだしい首都圏と違い、近畿圏は大阪だけでなく神戸や京都という100万人都市を擁し、移動の需要がほどよく分散される傾向にある。各地から大阪市内への通勤通学は1日100万人弱であり、同500万人以上といわれる東京23区とは移動需要のボリュームが全く異なっている。

 しかも近畿圏では、大阪・神戸・京都の三都を中心に、各社の鉄道がほぼ並行して競争を繰り広げている。大阪から対神戸ならJR・阪急・阪神、対京都ならJR・阪急・京阪といったぐあいだ。特に大阪~神戸間は数キロ間隔で阪急・JR・阪神が並行しており、1社だけが極度に混雑するような状況は出現しようがない。

 かつ、国鉄路線の環状化や関西本線(大和路線)の乗り入れ、JR東西線の開通による片町線・福知山線の直通のおかげで、京橋・天王寺・尼崎など、乗り換えが集中する駅とその周辺で発生していた混雑は相当に和らいだ。そのため今後も、近畿圏の路線で混雑率が上昇するような事態は、ほとんど起きないだろう。

1位は阪急電鉄神戸本線
「淡路~十三エリア」が混むワケ

淡路駅の高架化では17カ所の踏切が除去され、ダイヤの安定により混雑の解消が期待される淡路駅の高架化では17カ所の踏切が除去され、ダイヤの安定により混雑の解消が期待される(画像:大阪市) 拡大画像表示

 しかしながら、阪急の「淡路~十三エリア」は、朝晩の乗客の集中が激しい。最混雑区間は京都本線・千里線が淡路駅周辺、宝塚本線・神戸線が十三駅周辺と、半径数キロの狭いエリアに集中しているためだ。京都本線・千里線が十字に交わる淡路駅では、ちょっとしたダイヤの乱れが各方面に波及して混雑が膨れ上がり、十三駅も含めたほぼ全区間が地上を走っているため、けっこうな頻度で踏切事故が起こる(地元民はもう慣れっこになっていて特に驚きもしないのだが)。

 対策として、淡路駅の高架化工事が行われている。しかし、当初は17年に予定されていた完成が、24年時点で「31年度」とアナウンスされ、さらに延期の報道も出ている。片や十三駅の高架化は、見通しすら立っていない。これらが完成すれば、混雑も遅延も一気に解消されるはずだ。