インバウンド急増で激混み!
JR嵯峨野線が「知られざる」混雑路線に
ここで、ランキングには入らなかったものの、筆者が注目する「知られざる混雑路線」を紹介しよう。ズバリ、JR嵯峨野線(京都府)だ。なぜ知られざるなのかというと、この路線は混雑率調査の対象外となっているからだ。
京都市内を走るJR嵯峨野線(山陰本線)は、コロナ禍によって利用者がほぼ半減し、減便と車両の減車(4両化)を行った。しかし、外国人観光客(インバウンド)が急増する今、SNSで「地獄絵図」と表現されるほど激しい混雑となっている。
嵯峨野線の混雑は朝から日中までだらだらと続く上に、観光客がスーツケースを持って2~3人分のスペースを埋めるため混み合っている。この状況は、基本的に平日朝を基準とし、車内の床面積を0.14平方メートルで定員1名として計算(立席定員)する現行の混雑率調査では測り切れないだろう(そもそも以前から調査対象外の路線だが)。
一方で、「マンション建設などで人口が増加したため、全国有数の混雑率になった」と大々的に報じられたこともあって、早期に一部分で車両の増結が実現したJR西日本の路線がある。広島県の可部線だ(23年度混雑率118%、20年度同132%、19年度122%)。
激混みの嵯峨野線はなかなか対策が取られず、24年に入ってようやく行楽シーズンの増結や、臨時列車の運行が実現した。JR西日本の対応はあまり機敏とは言えず、「混雑率によって問題が可視化されないと、対策を後回しにしていいと考えているのでは?」と疑いたくもなる。
そもそも国交省の混雑率の調査は、対象路線が長らく変わらず、計測基準や調査機関などは鉄道各社によってバラバラで不明瞭な点も多い。
鉄道の混雑率を、マイホームを購入する際の判断材料にする人もいるだろう。しかし、先に述べた通り、混雑率の基準は一定ではない。本当の混み具合を知りたければ、数字はあくまで参考程度にして、実際に乗車して混雑を体感してみるのが最も分かりやすいはずだ。