送り火の観賞スポットと御利益
ここからは、実際に送り火を眺める際の注目ポイントをご紹介しましょう。
如意ヶ嶽の「大」の文字をはじめ、ほとんどの山ではすべての火床に一斉に点火されるため、文字や形が一気に浮かび上がります。その点、午後8時15分ごろに点火される左大文字「大」は、筆順の通り三つの火床が点火されていきます。そのため、徐々に文字が浮かび上がっていき、5~10分かけて「大」の字が完成します。
炎の色にもご注目を。送り火の火床にくべる割木はアカマツが主ですが、午後8時20分ごろに点火される「鳥居形」では、同じアカマツでも松ヤニが比較的多い根っこの部分を使うため、炎の色がより赤に近くなります。
送り火を眺めてご先祖様に思いをはせ、心を静めるだけでもいいのですが、“参加”することで得られる御利益もあります。それが、各山それぞれの「護摩木」です。元はご先祖様の戒名をしたため、供養をするためのものだったのですが、時代とともに役割が変わり、今を生きる人が自身や家族の厄よけや無病息災を願うようになりました。奉納した護摩木を、送り火の火床でおたき上げをしてもらえば、願いはきっと天に届くことでしょう。
その他にも、酒の盃に大の文字を映して飲み干せば無病息災になるという風流なものも。これはぜひいつか試してみたいですね。
送り火が消えた後の「消し炭」には、魔よけ、厄よけ、中風よけなどの御利益があるとされています。そのため、送り火が行われる山の近隣では、この「消し炭」を奉書紙にくるんで水引で結び、玄関に飾る風習が残ります。
かつては送り火の当日に、一般の人が山に登って消し炭を求めていた時代もありました。現在は安全のため、当日は関係者以外登山禁止となりました。翌日以降、「消し炭」のカケラが見つかれば幸運をつかめるかも!?