情報過多でダウン寸前の脳が
抑うつ状態を引き起こす

書影『精神科医だけが知っているネガティブ感情の整理術』『精神科医だけが知っているネガティブ感情の整理術』(ハーパーコリンズ・ジャパン)
伊藤 拓 著

 街で知らない言葉を見つけて「これ、どういう意味だろう?」と思ったことはないでしょうか。そんな時、自分のスマートフォンで意味を調べ、「なるほど」とスッキリした経験のある方も多いと思います。

 昔は重たい辞典で調べていたような事柄も、今はスマートフォンにキーワードを入力して検索するだけで、すぐに答えが得られます。さらに、チャットGPTのような生成AIに質問を投げれば、例まであげて詳しく解説してくれたりします。

 知りたい情報は、インターネットでなんでもすぐに手に入る便利な時代です。しかし、その反面、あまりに多くの情報がありすぎて、情報過多の状態になっているとも言えます。

 その中から必要な情報をピックアップするために、脳はまた処理に追われます。そして、どんどん疲れが蓄積するとダウンしてしまうのです。

 インターネットを使っている時でも、アクセスが集中しすぎて目的のサイトにつながらない、さらには、そのサイトのサーバー自体がダウンしてしまうことがありますよね。

 情報過多の脳の状態は、まさにサーバーダウン寸前と同じです。

 処理の許容範囲を超えて負荷がかかりすぎたことで、脳全体の機能が低下してしまいます。そのため、やる気が低下したり、イライラしたりするなど、感情がネガティブな方向に向きやすくなってしまうのです。

 忙しい毎日、自分は普段通りにしているつもりでも、気持ちが上向かない、悪いほうにばかり考えてしまうというのは、収集した情報の取捨選択に脳が疲れている状況かもしれません。その状況で無理をしていると、知らず知らずのうちに抑うつ状態になっていく可能性もあります。

 時には、スマートフォンを手から離し、目を休めて、情報から脳を解放してあげることも必要だと思います。気持ちを癒すつもりでスマートフォンを眺めるという方もいると思いますが、なんとなくネットサーフィンをしたり、好きなゲームをしたりというのも、気分転換をしているようで、実は脳には多くの情報が流入しています。それよりも、お風呂の中でぼーっとしたり、カフェでなんとなく外を眺めてみたり、脳の働きをオフにする時間を持つようにしてみましょう。

図表:脳が疲弊して感情もネガティブに同書より転載 拡大画像表示