台数稼ぎのための
「自社登録」とは?

 ここで大切になるのが登録台数です。もちろん売った台数も重要なのですが、きちんと登録を済ませてナンバープレートを取得し、公道の走行が認められた新車がどれだけあるかを自動車メーカーは重視しているのです。

 販売奨励金の仕組みとしては、ディーラーが決められた期間内に10台売って登録されれば○○万円、20台なら○○万円…といったように、台数に応じて増加します。ただ、20台分の報奨金が「10台分の倍」にとどまるとは限りません。クルマが売れる(登録される)ほど増加率も上がるケースもあります。

 そのため、仮に現時点で18台が新車登録されていて、「あと2台で報奨金が増える」といった状況だと、ディーラー側は「何としても台数を確保したい」と燃えるはずです。ですが、購買意欲の高いお客さんが都合よく来てくれるとも限りません。そこで使われるのが「自社登録」という手法です。

 自社登録はその名のとおり、ディーラーが取り扱っている新車を、自社のクルマとして登録することです。もちろん、本当に社用車・試乗車として使うために登録するケースもありますが、基本的には「台数稼ぎのための登録」という理解で問題ないでしょう。

 自社登録されるクルマは、軽自動車でもよく見られます。理由としては、軽自動車が自動車修理工場(いわゆるモータース)など、小規模な販売店で売られることが多いからです。

 先述した報奨制度では、メーカーから販売店に現金が支給されるだけでなく、「ご褒美の旅行」が贈られることもあります。大きな会社組織のディーラーにはあまり関係ない話かもしれませんが、小規模な販売店にとっては魅力的であり、そうしたインセンティブを手に入れるために自社登録するパターンも見られます。

 メーカー側は、なぜそこまでして登録台数・販売台数を伸ばしたいのでしょうか。「販売奨励金をばら撒かずに、とにかく経費を抑えて利益を上げるべきじゃないか」と考える人がいるかもしれませんが、それではCMなどの広告宣伝も否定することになってしまいます。