ひとたびクルマが売れ始めると
客が客を呼ぶ

 クルマを買う一般消費者の中には、「自分に合うクルマがほしい」「他人とは違うクルマを買いたい」といった層のほかに、「とにかく売れているクルマに乗りたい」という層も一定数存在します。その背景には「売れているクルマは多くの人が選んでいるのだから、買っても失敗しないだろう」という考えや、単に「流行に乗りたい」といった考えがあるようです。

 そして、ひとたびクルマが売れ始めると「客が客を呼ぶ」現象が起き、登録台数・販売台数がさらに伸びることも珍しくありません。だからこそ、メーカーはあの手この手で数字を伸ばそうとしているのです。

 なお、外国メーカーに関しては、本国から日本法人に「何台売ってほしい」といったノルマが課せられることがあります。これは「世界全体での販売目標を達成するため」が一番の理由ですが、実はそれだけではありません。クルマが「日本で売れている」という事実は、世界的に大きなセールスポイントになるのです。

 日本人のクルマに対する評価は非常に厳しいので、「日本で売れているクルマなら安心」という「お墨付き」となり、他国でのマーケティングを有利に展開できる効果が見込めます。

 また、本社と日本法人の駆け引きの中で、日本法人による「来年に売りたいクルマが発表されるから、今年は無理をしてでも注文を獲得し、引き続き日本市場に力を入れてもらえるようにしたい」といった目論見(もくろみ)がはたらくこともあります。

 そうした経緯で、かなりの台数のクルマが輸入され、ディーラーに出回ることになります。しかし、全てが思惑通りに売れるとは限りません。ノルマ達成が厳しくなったメーカーは、ディーラーにやる気を出させようと「ご褒美」をちらつかせます。その結果として、ディーラーによる自社登録の台数も増えていきます。

 とはいえ、日本車・輸入車を問わず、ディーラーが自社登録したクルマを保管していても、何の売り上げ・利益も生みません。そこで収益の足しにするべく、「登録済み未走行車」として中古車市場に流されるというわけです。