日本株はドル円と米国株で決まる、米金利の変曲点「乱高下相場」で見るべきシグナルPhoto:AFP=JIJI

8月に入り、急な円高が日本株を過去最大幅で下落させ、世界をリスクオフ警戒でおののかせた。しかし背景は、米国株相場を牽引(けんいん)してきた生成AI・半導体株の自律反落、米景気悪化観測が招いた米金利の先安観がある。円相場も日本株も米国次第の他律的変動が主である。しかし日本では、国内株高は日本礼賛論、円安は日本憂国論がまかり通る。米景気・金利の変わり目というキナ臭い局面に見るべき相場シグナルを明らかにする。(楽天証券グローバルマクロ・アドバイザー TTR代表 田中泰輔)

一見すると「正論」でも実際の
相場で使えるかは別問題

 8月に入り、世界の市場でリスクオフ警戒が強まった。株式市場や為替市場が連鎖的に暴落に見舞われた。この状況をあおったのは日本(円相場と日本株相場)と言って過言ではない。日本では、株高、円安環境が続く中で、相場変動シグナルになりえない日本論が「正論」とばかりに語られる。そして、この連鎖暴落に見舞われると鳴りを潜めてしまう。

 一見して「正論」でも、実際の相場で使えるかは別問題である。いざ唐突に暴落に直面した「専門家」たちは、実際に相場を動かしている要因、メカニズムに立ち返ることになる。そうであれば、最初から直接的な動因を語れば良さそうながら、そうはならない事情がある。一般投資家は、相場のロジック、情勢を理解できないまま、市場の急変に面食らうばかり。

 相場で勝負するための視座と、株式市場で見られがちな日本礼賛論、為替市場で横行する憂国論の視座は異なる。

 次ページでは、あくまで相場に挑む投資家の目線で、実際に市場では何が起こったのか、相場の暴落はどう連鎖したのか、何を見ていればリスクを回避できたのか、まかり通っていた「正論」は何が問題なのかを整理した。