日本株が米大統領選後に上昇を期待できる理由、利上げ恩恵の銀行株以外の有望業種は?Photo:PIXTA

株価急落の要因となった米国景気後退懸念は和らぎつつあり、円高も落ち着きつつある。だが、米国大統領選挙が終わるまでは不透明感は拭えない。株価上昇は選挙後だろう。その後の25年に向けて投資対象として有望な業種を検証していく。(UBS SuMi TRUSTウェルス・マネジメント ジャパン・エクイティ ストラテジスト 小林千紗)

株安の要因である円高、米景気
後退懸念共に弱まりつつある

 日経平均株価、TOPIX(東証株価指数)共に8月最初の3営業日で20%前後下落した。3営業日目の8月5日を底に翌6日以降20日までで20%上昇し、20日時点で8月の下落率は4%にまで縮小した。

 日本株を取り巻く不透明感がすべて払拭されたわけではなく、当面ボラティリティー(株価変動幅)は高い状況が続くと考えるものの(とはいえ、8月上旬のように一日で3%以上も株価が変動するほどの状況からは落ち着いた)、長期投資家にとってはバリュエーションは依然として割安感があるとみる。

 今後数カ月の間、短期的には、株価の回復はもう少し期待できると考えるものの、米国大統領選挙が近づくにつれて不透明感が高まるだろう。

 そのため、より継続的な上昇局面は上期決算と11月の米国大統領選挙を待ってからだと考える。過去のトレンドを見てみると、米大統領選挙に向けて9月以降はボラティリティーが高まり、S&P500指数は選挙前の数カ月間弱含む傾向にある。

 日本株下落の要因は大きく2つ挙げられる。(a)米国経済が景気後退入りするとの懸念、(b)急激な円高が日本の企業業績の下押しとなることへの警戒感だ。

 両懸念がすべて解決したわけではない。米連邦準備制度理事会(FRB)が9月の政策決定会合でどの程度利下げをするか(0.25%か0.5%か)、日銀の今後の利上げのペースがどうなるか、それらの為替への影響にはまだ不透明感がある。

 ただ、急激な円高の要因となった円キャリートレードを目的とするショートポジションの解消はおおむね終了したとみられ、ドル円は145~150円で落ち着きつつある。また、直近の米国雇用指標やCPI(消費者物価指数)からは米国経済がリセッション(景気後退)ではなく、ソフトランディングに向かっていることを示している。

 次ページでは、日本株下落の要因をさらに詳細に検証し、株価の先行きを予測するとともに、投資対象とすべき銘柄群についても触れていく。