TOWA、タツモ…半導体関連「ニッチトップ」技術持つ日本企業、次の上昇相場で期待大?【厳選8社】Photo:PIXTA

期待先行で買われた日本の半導体関連銘柄の株価は、足元で踊り場を迎えている。ただ、半導体の製造装置や材料を手掛ける日本企業の中には、市場規模は小さいが半導体に欠かせない、いわゆる「ニッチ分野」で、世界一のシェアを持つ「グローバル・ニッチトップ」と呼ばれる企業があり、その成長性が市場関係者から注目されている。中でも高い競争力を持つ8社を、業界のプロが厳選した。(丸三証券アナリスト 片白年寛)

旺盛な AI 関連投資を背景に
再び上昇相場へ突入の見込み

「生成AI(人工知能)」ブームを背景に株価上昇が続いていた日本の半導体関連銘柄は、けん引役だった米巨大テックの株価下落で軟調に転じている。だが、中にはニッチ分野に特化し、強固な収益基盤を持つ日本企業もある。

 東京証券取引所に上場する主要な半導体関連銘柄で構成する「日経半導体株指数」は、2023年12月末から24年3月末の29.1%の上昇に対し、24年3月末から7月末は13.7%の下落となり、踊り場を迎えた。さらに日本株が大暴落した8月5日の翌6日の同指数は7月末比で13.9%も下落した。

 それまでは、生成AI向け画像処理装置(GPU)を手掛ける米エヌビディアが6月に時価総額で世界首位に立ったことに象徴されるように、生成AIに対する高い期待が半導体関連銘柄の株価を押し上げてきた。

 今後の半導体株相場は、半導体市場や半導体設備投資の見通しが鍵となるだろう。

 世界半導体市場統計(WSTS)が発表した 24年春季半導体市場予測によると、世界半導体市場は23年の前年比8.2%減から、24年は前年比16%増と再拡大が予測されている。世界的に旺盛な AI 関連投資を背景に、メモリーや一部ロジック製品の需要の急拡大が牽引(けんいん)するものとみている。

 25年についても前年比12.5%増と更なる市場拡大が予想されており、AI 関連の需要に加え、環境対応や自動化などの成長領域を念頭に、半導体市場の継続的な成長が見込まれている。

 半導体設備投資の見通しも明るい。24年7月に発表された日本半導体製造装置協会(SEAJ)の日本製半導体製造装置の販売高予測によれば、24年度4兆2522億円(前年度比15%増)、25年度4 兆6774 億円(同10%増)、26年度5兆1452億円(同10%増)と連続して販売高の増加が見込まれている。24年1月時点の予想からも、24年度は2174億円、25年度は2391億円増額されており、半導体設備投資は拡大局面を迎えると予想される。

 中長期的には、30年に世界半導体市場は1兆ドルを目指すといわれており、半導体製造装置も同様に高い成長率が期待される。中長期的に力強い市場成長が見込まれることから、再度上昇相場に入っていくと考えられる。

ニッチ分野で価格決定力を持つ企業は
市場評価が高まったら“大化け”も

 半導体関連銘柄が現在の踊り場に入る前、米エヌビディアを起点とした物色は日本の半導体関連銘柄へ波及した。

 生成AIの実現に不可欠な、高速・大容量のデータ処理を可能にする「HBM(High Bandwidth Memory=広帯域メモリー)」や、チップレット集積などを駆使した半導体の高性能化に不可欠な半導体パッケージの総称である「アドバンスドパッケージ」――例えば、台湾TSMCが開発した半導体の高性能化と高密度化を実現するための先進パッケージング技術「CoWoS (Chip on Wafer on Substrate、コワース)」など――といわれる先端パッケージ技術に関連する銘柄が注目を浴び、東京市場では東京エレクトロンや、ディスコ、アドバンテストなどの半導体製造装置メーカーの株価が大幅上昇。半導体関連銘柄は日本の歴史的株高の立役者となった。

 これに対して、次の上昇相場では、業績面などで銘柄の選別色が強まることが想定されるため、半導体関連銘柄の中でも世界市場のニッチ分野で勝ち抜いている企業を中心に注目したい。

 日本には半導体製造装置や材料に関して、比較的規模が小さい専門的市場である「ニッチ分野」で高いシェアを有する企業が数多く存在している。例えば、最先端の回路形成に必須のEUV(極端紫外線)露光装置の検査装置で100%のシェアを握るレーザーテックが代表的だ。同社の株価は14年12月末終値から24年5月につけた上場来高値までの比較で約132倍と、「テンバガー」(株価が10倍になった銘柄)をはるかに超える“大化け”銘柄となった。

 レーザーテック以外にも、ニッチ分野で勝ち抜いている企業は、価格決定力を背景とした稼ぐ力を有しながら、知名度が低く株式市場で正当に評価されていないケースが多い。そのため、業績拡大に伴って市場における評価が高まった場合、大化けするポテンシャルは大きいと考えられる。

次ページでは、そうした日本企業8社について、それぞれ強みとなるポイントとともに、今期と来期の予想営業増益率を、銘柄表にまとめて紹介する。

図表:半導体のニッチ分野で注目の日本企業8銘柄