大暴落でも全額現金化はNG!
想定外の事が起きてもマイルールは変えない

 もちろん、「10年分の生活費なんて貯められない」という人もいるはずです。これは年金受給額との差額で十分です。例えば、生活費と年金受給額の差が月額10万円の場合、「120万円×10年分=1200万円」を確保しておくという意味です。

 厚生労働省の「賃金事情等総合調査」(2021年)によると、大企業(資本金5億円以上かつ労働者1000人以上)の平均退職金額(男性、大学卒)は2230万4000円で、中小企業は1091万8000円(東京都の「中小企業の賃金・退職金事情」2022年版)です。退職金を大切に活用すれば、仮に市場で暴落が発生したとしても老後生活への影響は最小限に抑えることができるでしょう。

 老後の資産運用で絶対にやってはいけないことは、想定外の事態が起きたときに「ルールを変えてしまう」ことです。つまり、昨今のような大暴落が起きたとしても、パニックになって全額現金化することは避けなければなりません。市場は世界中のあらゆることの影響を受けて、上がりもすれば、下がりもします。

 そこで一喜一憂して「マイルール」を変更してしまえば、安定した老後生活を確保できないどころか、大きな損を経験することになりかねません。仮に市場が暴落して資産が一時的に減少してしまっても、定額と決めたなら定額を、定率ならば定率を機械的に取り崩していく方が良いです。

 市場は「生き物」であることを認識し、上がり続けることがなければ下がり続けることもない点を理解しておかなければなりません。自分の生活費や家庭環境などを考えながら、どちらの選択が良いのか判断することをオススメします。