この国家衰退の流れは、今の日本で起きてもおかしくないと思っている。もちろん、今の社会状況から、暴力的な反政府運動が盛り上がるとは考えにくい。しかし、東日本大震災での民主党政権のように、やることなすことボロカスに叩かれてからの「政権交代」は十分あり得るだろう。

 能登半島沖地震を見てもわかるように、日本の防災体制はかなり遅れている。先進諸国がドン引きするような「体育館で雑魚寝」なんてのを未だにやっているのがその証左だ。復興もうまくいかない。能登半島沖地震から半年以上経った今も、倒壊家屋の公費解体は進まず、申請に対する解体の進捗率は1割ほどにとどまり、未だに避難所暮らしを強いられる人もいるほどだ。

 南海トラフ地震や首都直下型地震は人口密集度や被災エリアの広さから、能登半島沖地震と比べて桁違いの被害・犠牲者が出ることは間違いない。

 岸田首相の後に誰がリーダーをやるのか知らないが、そのような「悪夢」が現実になったとき、自民党政権の維持はできないだろう。

 先ほど江戸幕府を例に挙げたが、世界の歴史を見渡しても、「政変」や「社会変革」は巨大地震、巨大台風、火山噴火など自然災害がトリガーになることが多い。それは為政者たちもよくわかっている。

 「なんか最近、政府が南海トラフや首都直下型地震の恐怖をやたら煽るなあ」と違和感を覚える人も多いだろう。それはもしかしたら、日本という国の形が大きく変わっていくことの「前兆」なのかもしれない。

(ノンフィクションライター 窪田順生)

「南海トラフ巨大地震」の恐怖を煽る政府、絶対に“口に出せない”本当の狙いとは?