帳簿と実際の在庫を合わせるために行った
なんともお粗末な「隠蔽工作」

 グッドスピードは中古車販売業であり、本来、売り上げの計上タイミングは、中古車を顧客に引き渡した時点にするのが適切です。

 しかし、同社は、厳しい予算達成のプレッシャーなどのため、売上高を多く見せたいという動機で、顧客に中古車を引き渡す前に先行して売り上げを計上するという不正を常習的に行っていました。

 こうした計上は、この会社の社内用語で「納車テイ」と呼ばれていたといい、社内では周知の事実だったようです(“納車したテイ”にするってことでしょうね……)。

中古車販売グッドスピード「納車テイ」の呆れた隠蔽工作はなぜ6年もバレなかったのか?筆者作成 拡大画像表示

 ただ、このような売り上げの先行計上は、普通に監査法人で監査をすれば発覚するはず。なぜ約6年もの間バレなかったのでしょうか。

 実は、グッドスピードは監査法人を欺くために、顧客へ引き渡した証拠としての「車両納品確認書」を偽造するなどのさまざまな偽装工作を行っていました。そうした偽装工作の中には、経理部が加担していたものもありました。

 その手法は、実に大胆なものでした。具体的には、監査法人が店舗に出向いて在庫の車を確認する前に、社員が先回りして店舗に行って、顧客に引き渡しているテイにしている在庫の車を“隠す”というものでした。