しかし、業界関係者の多くによると、このひけらかし事件がトリガーとなり、当局が金融業界、特に証券関連業界の「超」が付くほどの高給に目を向け、「監督」を決意させた。当時の統計によると、金融業界関係者の平均賃金は、一般製造業の2.35倍、その他業界の1.69倍となっている。中でも証券業界は製造業の3.76倍、その他業種の2.71倍という高給だ。

 ひけらかし事件の翌月、中央政府は「国有金融企業財務管理の引き締め」を求める政策を発表し、過度な高賃金を調整するよう業界に通達。そこから金融業界に対する政府の厳しい監督、取り締まりが始まり、国内での企業上場条件が厳格化された。これが投資銀行や証券会社の収益に大きな打撃をもたらした。

昨年秋に
3億円の豪邸を購入していた

 そんな中、鄭さんは公務員の夫(一説には中金公司の同僚だともいわれる)と昨年10月に頭金約400万元(約8000万円)を支払い、約1500万元(約3億円)の豪邸を購入したばかりだったという。その時点での残金1165万元(約2億4000万円)は、今後30年かけて支払う予定だった。

 月々の返済額は今年6月の時点で約5万7000元(約117万円)。2021年には月収約10万元(約205万円)だった鄭さんと公務員の夫にとって、それはそれほど高いハードルではなかったといわれている。

 だが、先にも述べた通り、中金公司は今年3月に職員に減給を通達、さらには7月3日に彼女の賃金は約3万5000元(約72万円)にまで減額された。また、一説によると、彼女は妊娠中で、さらに夫の賃金もここ半年で引き下げられていたため、彼女はそのまま衝動的にオフィスから飛び降りた――というのが、大方の説となっている。