タオルケットは過去のもの?
湿度を調整する快眠アイテム

 一筋縄ではいかない夏の湿度コントロール。舟山氏いわく「寝具選びのポイントを押さえると睡眠時の湿度調整に役立つ」という。

「近年、睡眠中の温度や湿度の調整に着目した『掛け布団』や『マットレス』が、続々と市場に出ています。たとえば、湿気や熱を外に逃がす技術を取り入れたマットレスや、除湿効果があるシリカゲルを中綿に付着させた夏用掛け布団など、種類も豊富。最近、あまり快適に眠れていないと感じている人は、寝具を見直してみましょう」

 エアコンの設定温度を低めにして、夏用の掛け布団を使用すると良質な睡眠が取りやすくなるという。かつて夏掛けはタオルケットが主流だったが、睡眠に対する関心の高まりとともに、機能性を重視したさまざまな寝具が登場しているのだ。

 また、肌に直接触れるパジャマの生地や素材によっても湿度の調整が可能、と舟山氏。

「パジャマが体に密着していると、湿気がこもって放熱の妨げになります。肌と衣服の密閉を防ぐなら、吸湿速乾性の高い生地がおすすめです。通気性の高いメッシュ素材も湿度調整に適してます。たとえば、当社の夏用リカバリーウェアの場合は血行を促進することで血流改善、疲労回復などの効果が期待できますが、その効果はそのままに、季節に合わせてさまざまな素材を用意しています。夏は汗をかいてもすぐに乾き、サラサラの肌触りを持続するような生地を採用しています。このように、吸湿速乾性の高いパジャマで眠ると、放熱を阻害したり、汗でベタついたりする心配は軽減されます」

 人によっては、着古したTシャツをパジャマにするケースがあるが、舟山氏は「眠りには適していない可能性が高い」と指摘する。

「快眠を目指すなら、肌と密着せず、寝返りの打ちやすさを重視したパジャマで眠りましょう。また、入浴後にパソコンで作業をしたり、食事を摂ったりして起きている時間が長い人は、部屋着とパジャマを分けるのがベター。部屋着からパジャマに着替えて眠る、というサイクルを習慣化すると、体と心が睡眠モードに切り替わりやすくなります」

 パジャマは、眠りのスイッチとしても役立つようだ。

 最後に舟山氏は「体をコンディショニングする方法として、まずは睡眠の改善に取り組んでほしい」とアドバイスを送る。

「不眠大国と呼ばれる日本の人々は、忙しいときに睡眠時間を削る傾向があります。その気持ちもわかりますが、長期的な睡眠不足が、肥満や生活習慣病、脳疾患、心疾患のリスクを高めることは科学的にも明らかになっています。とくに中高年層は、若い頃とは違って睡眠不足の悪影響がダイレクトに現れる年代です。自身や家族の心と体の健康を守るための手段として、睡眠のコンディショニングに目を向けてみてください」

「夏はよく眠れないのが当たり前……」と諦める前に、寝室の湿度コントロールからはじめてみよう。

舟山健太舟山健太
東京大学大学院薬科学研究科で神経科学(脳科学)の基礎研究を行い、薬科学博士を取得。武田薬品工業株式会社のR&D部門に入社し、中枢神経疾患の創薬研究のプロジェクトや国内外のアカデミック研究機関との共同研究の起案から研究リードまで行う。その後、経営企画部において代表取締役CEOの戦略サポートを経て、2022年5月にTENTIALに参画。2020年にMBAを取得(至善館大学)。