「仕事で挫けそうになったとき、ある記憶を思い出しています」
そう語るのはアメリカン・エキスプレスの元営業である福島靖さん。世界的ホテルチェーンのリッツ・カールトンを経て、31歳でアメックスの法人営業になるも、当初は成績最下位に。そこで、リッツ・カールトンで磨いた「目の前の人の記憶に残る技術」を応用した独自の手法を実践したことで、わずか1年で紹介数が激増。社内で表彰されるほどの成績を出しました。
その福島さんの初の著書が『記憶に残る人になる』。ガツガツせずに信頼を得るための考え方が満載で、「本質的な内容にとても共感した!」「営業にかぎらず、人と向き合うすべての仕事に役立つと思う!」と話題。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、著者を奮い立たせる「感動の記憶」について紹介します。
30歳で挑戦した「パイロット」への道
過去の感動体験を思い出せると、「そうだ、自分はこのために働いているんだ」と、自分が進む方角を思い出してまた前に進めます。感動体験の記録が「心のガソリンスタンド」になるんです。
僕の「心のガソリンスタンド」には、とりわけ特別な記憶があります。営業の仕事に挫けそうになったときに取り出してきた、とても大切な思い出です。
じつは僕には、航空会社のパイロットを目指した時期がありました。
10代、20代の話ではありません。30歳のときの話です。営業になるよりも前、リッツ・カールトンで学んだホスピタリティを別の世界で発揮してみたいと思い立ち、最初に選んだ道がパイロットだったのです。
幼い頃の僕は飛行機が大好きでしたが、CAさんやグランド・スタッフさんがニコニコと接客しているのに対し、スタスタと歩いて行ってしまうパイロットの姿を見て、子どもにとって「夢の職業」なのにもったいないなと感じていました。それなら、自分が世界で最初の「ホスピタリティ溢れるパイロットになろう!」と、パイロットへの道を志しました。
失意の中で見つけた「とある記事」
さっそく、大阪にある民間のパイロット養成学校に入学しました。もちろんパイロット経験なんてありませんでしたが、社会人経験があった分、「自分ならできるはず!」と、根拠のない自信だけがありました。
でも訓練が始まってみると、僕は成績最下位に。同期のなかでもどんどん遅れを取っていきました。社会人経験があるためにプライドが邪魔をして、年下の同期たちに相談したり、アドバイスをもらったりができませんでした。それも、成績が上がらない大きな理由でした。
「もう、辞めてしまおうか……」
養成学校に入って3ヵ月が経った頃、僕はそう考えるようになりました。学科試験が目の前に控えていましたが、気乗りしないまま試験情報を見ていました。
そのとき、ある記事が目に飛び込んできました。