メディアを次々に買収し
テック業界へ利益を誘導する

 新しいオーナーが出版・刊行物の内容に影響を与えることを打ち消すのがお決まりだが、それは過去の経験とまったく矛盾する。20世紀初頭、シカゴのマコーミック家やウィリアム・ランドルフ・ハーストら、いずれも強欲な大物たちが新聞社を買収したとき、彼らはメディア帝国の拡大や反組合主義、自分たちの財産を脅かす者への妨害という方針を推し進めた。

 今日のマスメディアはすでに権力の集中に難色を示してはいるが、たとえばジェンダー、人種、環境問題などで、テックオリガルヒの進歩主義的な考えを支持する傾向にある。資金面での依存は、テック業界の利益をより後押しする論調となる可能性が高い。

 ニュースは、テックオリガルヒに支配された文化の1分野にすぎない。アマゾンは書籍業界にたいして絶大な影響力を持ち、紙書籍の販売では50%以上、電子書籍の販売では90%以上のシェアを占める断トツの最大手であるが、著作物の複製を許可する力を持っている。アシェットやマクミランのような老舗出版社でさえ、「人質」を取られた状態でアマゾンの要求に従わざるをえない場合がある。

 エンタテインメント業界もテックジャイアントの餌食になりつつある。2006年にグーグルが買収したユーチューブ(YouTube)は、音楽業界で決定的な存在となっているが、アーティストは従来受け取っていた報酬を得られない場合が多い。音楽ストリーミングやミュージックビデオは、グーグルのような企業がより多くの個人情報にアクセスし、そこで得たデータを広告主に販売するための新たな手段となっている。

 同じようなことが、広く映像の世界でも起こっている。シリコンバレーのベンチャー企業が出資するネットフリックスは、現在、どの映画スタジオよりも高い価値があると言われており、アマゾンと同様、同社が制作した番組の多くは数々の賞を受賞している。2018年にネットフリックスはどこの大手スタジオよりも多額の資金を番組制作に投じた。ネットフリックスとアマゾンはいずれも1億人をはるかに超える加入者を抱え、既存のケーブルテレビ会社が達成した顧客数をはるかに上回っている。