株価が好調だったメガバンク各社がここにきて一服感を見せている。国内の利上げは銀行にとって追い風となるが、メガバンクには特有のリスクも存在している。果たして、メガバンクはいま「買い」なのか。投資妙味のある銘柄はどれなのか。特集『二番底か高値奪還か 最強株で勝つ!』の#15では、銀行セクターの現状を解明しよう。(ダイヤモンド編集部 山本 輝)
好調メガバンクの死角
株価調整は買い時か?
金利上昇で業績に追い風が吹く──。これまで銀行セクターは、そうした市場からの期待を一手に集めてきた有望セクターだった。
2023年、日本銀行の総裁に植田和男氏が就任し、これまで長らく続いてきた「異次元の金融緩和」が出口に向けて動き始めた。23年7月以降、YCC(イールドカーブ・コントロール)の柔軟化をきっかけに長期金利が上昇。また、今年3月には短期金利に影響するマイナス金利政策も解除され、7月には政策金利が0.25%まで引き上げられた。
金利上昇は、利ざやの改善や国債運用益の増加などによって収益にはプラスに働く。銀行株は実績より市場の期待が大きく作用するが、この間、メガバンク3社の株価はTOPIX(東証株価指数)を大幅に上回って推移しており、“勝ち組”銘柄の一角として君臨してきたのだ(下図参照)。
ところが、この好調な株価に水を差したのが、8月の相場急変だ。ピーク時に1850円だった三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の株価は、足元では1400円台で推移している。市場で意識されてきた“PBR(株価純資産倍率)1倍超え”も一時達成したものの、つかの間の出来事で、現在は1倍割れの水準に逆戻りしている。
急落の背景には、これまで市場平均に大きく勝ち越してきたことで、ネガティブなニュースが利益確定売りを招きやすかったことや、7月の利上げを踏まえ、日銀が次の利上げに進むまで時間が空くとみられたことなどがある。
これが一時的な調整なら、ある意味「買い時」とみることもできるだろう。だが、ある専門家は、メガバンクが「ここから株価が大きく上がることはあまり考えにくい」と、積極的に買いに動く局面ではないと解説する。
実は、これまで金利上昇期待を追い風に株価を伸ばしてきたメガバンクだが、幾つかの理由からその構図が転換点を迎えているのだ。
果たして、メガバンク株が迎えた潮目の変化とは何か。メガバンクを超える銀行セクターの注目銘柄はどこなのか。次ページでは、メガバンクの動向と特有のリスクについて解説するとともに、メガバンクよりも投資妙味があるとプロが注目する銘柄について、その内容を検証していこう。