高配当・半導体・生成AI超進化!5年後の業界地図#3Photo:JIJI

各社で最高益が続出し、業績が波に乗るメガバンク。背景には、「金利ある世界」の復活による利ざやの拡大や堅調な資金需要がある。ただし、その好調の要因や今後の成長ポイントを分析すると、金利だけではない要因も浮かび上がる。“わが世の春”を謳歌するメガバンクに死角はないのか。特集『高配当・半導体・生成AI超進化!5年後の業界地図』(全19回)の#3では、その中身を検証するとともに、今後の金利上昇がもたらすメガバンクへの影響を解説する。(ダイヤモンド編集部 山本 輝)

三菱UFJ、三井住友が最高益
金利ある世界の復活が追い風に

 メガバンクの業績が絶好調だ。

 2024年3月期の決算で、三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)、三井住友フィナンシャルグループ(FG)、みずほフィナンシャルグループ(FG)の3社は、それぞれ純利益を1兆4907億円、9629億円、6789億円計上した。このうち、三菱UFJFGと三井住友FGの2社が過去最高益を更新。みずほFGも過去最高に迫る水準となった。25年3月期は、各社いずれも最高益を更新する見通しだ。

 まさに“わが世の春”である。好業績の要因は幾つかあるが、一つは、待望の「金利ある世界」の復活と、経済活動の活発化に伴う企業の堅調な資金需要により、預貸金ビジネスが復活しつつあることだ。

 日本では、23年7月以降、YCC(イールドカーブ・コントロール)の柔軟化をきっかけに長期金利が上昇。24年3月には短期金利に影響するマイナス金利政策も解除され、その結果、メガバンクの貸出金利も上がり、利ざやが改善傾向にある。

 例えば、三菱UFJFGの国内大企業向けの貸し出し利ざやは、24年3月期末で0.65%と、前期末から0.1%上昇した。また、海外貸し出し利ざやは1.39%とさらに大きく、同0.15%上昇している。

「今後も、大企業向けの貸し出しのリプライシング(高金利の貸し出しへの置き換え)や一部の住宅ローン金利などの上昇も続くなど、金利上昇により資金利益が2~3年は拡大する局面にある。メガバンクは楽しみの多いセクターといえるだろう」と、ゴールドマン・サックス証券の黒田真琴アナリストは解説する。

 加えて、長期金利の上昇は、銀行の収益の柱の一つである国債など債券の運用益を改善させる効果も持つ。より高利回りの国債の保有残高が増えることで運用利回りが向上するためだ。

 日本銀行によるさらなる利上げも視野に入る中、金利上昇の追い風はメガバンクの業績に一層の恩恵をもたらしそうだ。

 では、それらの恩恵は一体どれくらいの影響を与えるのか。その詳細を次ページでチェックしていこう。

 また、メガバンクの好業績は金利上昇だけでなく、実は「稼ぐ力の高まり」によっても支えられている。金利上昇だけでない、メガバンクの業績を読み解くポイントとは何か。反対に、順風満帆に見えるメガバンクの業績に“死角”はないのか。加えて、高配当銘柄としても人気のあるメガバンク。投資妙味はどれだけ強いのか。

 次ページでそれらの展望を解説していこう。

図表:銀行主要6社はこうなる!