僕が左寄りなのではなくて
世間が右傾化しているのでは

――書評の中には、博士と相対するように見える、小林よしのりさんも取り上げていますね。

 小林さんが書かれた『戦争論』シリーズ(幻冬舎)を読んだ当時は、影響も受けたけど、今は政治的な思想信条のスタンスは違いますね。

 ただ、僕自身は世間から見ると左寄りに思われているんですが、僕には世間が徐々に右に寄っているように思うんです。世の中の受け入れられ方が変わったから、左に見えるだけであって。やっぱり、リベラルのような考え方を身に付けるには、たくさん本を読んで、歴史を知らないと一瞬で考えが右に染まってしまいますから。

――そうした強い信念をお持ちだったから、参議院議員に立候補されたのですか。

北野武と松本人志「映画」との向き合い方にみる“意外な共通点”とは?水道橋博士/1962年生まれ。ビートたけしに弟子入り後、玉袋筋太郎とお笑いコンビ「浅草キッド」を結成。文筆家としても活躍し、大宅壮一ノンフィクション賞にノミネートされた「お笑い男の星座2」(文藝春秋)のほか、話題作を多数発表。2024年9月には自身の出版社「虎人舎」を立ち上げるなど、還暦を越えた今も精力的に活動を続けている。

 というよりも、(スラップ訴訟の)裁判のこともあったので、これからは他人のために生きようと決めて、政治家になろうと思いました。ただ、たくさんレギュラー番組を抱えている時は、そんな決断はできない。

 共演者だけでなく、音声さんや照明さんとかスタッフたちの生活も一緒に支えていくような仕事ですから。当時は、レギュラーが1、2本だったから、政治の世界に打って出られました。

――政治家は公人なので、批判されることも増えると思うのですが、覚悟が必要だったのでは?

 芸能の世界に入った時点で、何を書かれてもいいし、何を撮られてもいいっていうスタンスでやってます。ただ、家族とは別人格ですから、そこだけは違いますけど。

 今はSNSでめちゃくちゃ叩かれる時代ですよね。ただ、僕がうつ病になったのは、それが原因だって書かれることもありますが、全く違いますね。人が自由に発言できることには大賛成で、それに対して僕自身が病むということは、あり得ません。

 逆に、言論を阻むものに対しては、「人は何を発言してもいいはずだ!」っていうスタンスなので、炎上も平気ですよ。むしろ、僕は“炎上で暖を取る”なんて言ってるくらいです(笑)。

 炎上なんて黙ってりゃ消えるんですよ。でも、僕はあえて反論をする。なぜなら、昔のように「議論」をすべきだと思うから。タコツボみたいに同じ意見の人間ばっかり集まって仲良しこよしをやるんじゃなくて、きちんと議論できる世の中にしたいですね。

書影水道橋博士『本業2024』(青志社)発売から2カ月足らずで重版決定!続編も進行中!水道橋博士『本業2024』(青志社)