この10年の賃上げは
政府主導で行われた

 周知のようにここ数年来、官製春闘といわれるような政府のてこ入れの下で、ベースアップが復活しつつあります。とはいえ、このままかつてのように毎年定期昇給を上回るベースアップが繰り返されるようになれば、それで万々歳というわけにはいきません。

 2024年春闘でも見られたように、政府の強い賃上げ要求に逆らえずに、労働組合側の要求を超える高額の回答を企業側がするなどという事態は、利害の対立する二者間での交渉でものごとを決めていこうという労使関係の基本枠組みに反するものだからです。

 なぜそんなことになるのかといえば、定期昇給という形でほうっておいても個人の賃金が上がっていくからということに加えて、ベースアップという賃上げ方式そのものに潜む企業別組合にとっての困難性があるからです。

 ベースアップ概念の基になった賃金ベースとは賃金を上げないための概念でした。その賃金抑制のための概念を逆手にとって、賃金ベース打破=ベースアップを要求するというスタイルが40年にわたって続いたのですが、その根っこには企業単位の支払能力という枠が厳然として存在します。