コロナ収束で賃上げ実施率は
早期に回復したが…
コロナ禍の当初、大企業に比べて体力の乏しい中小企業は、賃上げで人件費が上昇することに慎重だった。2020年度の中小企業の賃上げ実施率(55.9%)は、大企業の65.9%を10.0ポイントも下回った。先の見えないコロナ禍で、定期昇給すら中止する企業が相次いだ。また、コロナ禍の外出自粛などで経済活動が停滞し、2019年度までの人手不足が解消したことも賃上げに影響した。
2021年度はコロナ禍の収束が見通せず、賃上げ実施率は大企業が76.6%、中小企業が69.2%と、前年度より幾分回復したものの、例年より低水準だった。
ところが、2022年度は一転して大企業が88.1%、中小企業も81.5%と、2019年度(大企業81.5%、中小企業80.8%)を上回る高水準を記録した。円安やロシアによるウクライナ侵攻など、地政学リスクによるエネルギーや食料品の価格上昇に対応して、賃上げの実施に踏み切る企業が増加した。
新型コロナが5類に移行した2023年度は、コロナ後への期待と人手不足の加速で賃上げ実施率が上昇した。大企業は最高を更新する89.9%に達し、中小企業も84.2%まで伸びた。
賃上げ率は、春闘での「定昇相当分を含む5%程度の賃上げ」方針が掲出され、賃上げ実施企業のうち36.3%が「5%以上」の賃上げを回答した。特に、「5%以上」の賃上げを実施した企業の割合は、大企業が28.7%に対し、中小企業は37.0%で、中小企業が8.3ポイントも上回る結果となった。もともとの給与水準の違いもあるが、人材確保のために中小企業が賃上げを迫られたことがうかがえる。